電車が走っている
電車が走っている。
大きな丘を進む。進む。スピードをぐんぐんと上げて進んでいく。
力強くてっぺんまで進んでいく電車。
丘を登り切って、今度は下り坂。
スピードを緩めることなく、さらに加速していく。
あっ。
線路の上で、子供が遊んでいる。
危ない、早く止めないと。
急いでブレーキを探す。あった、これで止められるはずだ。
どうして。動かない。
必死に力を込めても、ぴくりともしないブレーキハンドル。
子供は遊ぶのに夢中で気が付かない。
坂を降りていくたび、子供に近づくたびに、電車は加速していく。
進む。進む。止まらない。もう間に合わない。
ぐちゃ
目に、記憶にくっきりと刻み込まれた子供だったナニカ。
ああ。でも悪くない。悪いのは子供だ。
あんなところにいたんだから死んでしまってもしょうがない。
ハンドルに力を込めて必死に止めようとしたからね。
乱れた呼吸を整えるため、目を閉じて深呼吸する。
少しして、目を開ける。
電車は未だ走っていて、丘を登るためにスピードを上げるだろう。
よかった、どうやら夢だったみたい。
『電車は走っている。』 本当に?