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番と言われても。

今、この瞬間の幸せ

作者: 佐藤なつ
掲載日:2023/03/03

私は家族と言う物がわからない。

家族構成は、父・母・私、妹の四人。

しかし、内情は父・母・妹の三人家族とお手伝いさんの私。

と、言う構成だ。

私はこの家では異分子だ。

外見も性格も。

身内ながら家族は皆、中々の美形だ。

そして陽キャだ。

しかし、私は、真反対だ。

更に言うと、身体も弱い。


私の身体が弱い理由は生まれつきと言うこともある。

私は早産で生まれた。


身体も小さく弱かった。

そしてアレルギー体質だった。


大変なんですよアレルギー。

食べられる物が少ない。

代替用品を探すのが大変。

お金もかかる。

私は複数のアレルギーがあったから離乳食で母はパニックになったらしい。

小麦・卵・牛乳・果物で何かあった気がする。

幸い米は食べれた。

初めての子育て。

大してかわいくもない赤ん坊の上に大層手間がかかる。

丁度、父は短期単身赴任だった。

祖父母は遠方だった。

ワンオペ育児で頼る所もなく、思考停止になった母は私に米を出し続けた。

最初は良いだろう。

米だけでも。

だが、米だけを与え続けた子供がどうなるのか。

栄養が偏った子供がどうなるかなんて簡単な事だ。

お陰で偏食になってしまった。

おまけに量もなかった。

当然、成長しない。

小さいまま。

と、言うわけだ。

成長不足は体力不足に繋がるのだろうか。

私は色んな感染症にかかり、入院をしまくった。

付き添いに疲れた母は私を祖父母に委ね、療養に入った。

それで、父の赴任先に行ってすぐ妹を授かったらしい。

次に生まれた妹はそれはそれは健康体だったらしい。

良く乳を飲み、よく寝た。

かわいくて仕方が無かったらしい。

可愛い妹の世話をして気持ちが落ち着いた母の元に私は帰された。

それで少し平穏な時間を過ごしたのだが、その後、妹も軽度と言うか私より少ないがアレルギーを発症した。

すぐに治療を受けていた。


医師の指導を受け、アレルギー食物を除去し、食べられる物を探し、少しずつ負荷試験なる物を受けていた。

私はアレルギーに関しては病院に連れていってもらえず、一人で留守番していた。

その頃は寝込む程度で入院レベルまで風邪などが悪化することは無くなっていた。

私に関してはもう充分通院したからいいわよね。なんて母に言われたものだ。

治療を受けなかった私だが、幸いな事に年を重ねると自然に耐性が獲得出来た症例だったらしくアレルギー症状は治まっていった。

それでも、今も食べられない物はある。

余談だが、私は、両親がいない間に、どうやら家にある物を盗み食いして生き延びたらしい。

私は胃腸に強く出るタイプだったらしく合わない物を食べたら嘔吐・下痢で苦しんだ。

気持ち悪くてえずく中、盗み食いを怒られたのだが、そうしなければ餓死していたかもしれないとも思う。

いや、白米は出して貰えたから栄養が偏ったくらいで生きられたか。

両親が外出していて良かったのか悪かったのか。

今となってはわからない。

わからないが、私はそれをきっかけに現実を考えることが出来るようになり、色々な奇跡があって私は今を生きていると言うことを知った。

あの時、食べる物がもう少し多かったら。

あの時、食べなかったら。

様々なIFの元に私は命を繋いでいる。

今、その事に私は感謝をしているのだ。

何にって?

自分の生き汚さにだ。

中々自分あっぱれな奴だと思う。

生きていける自分の強さを知ることが出来て、自分は自分で生きていくことを心に決めたのだと思う。

思うと言っているが、振り返ってみればと言うだけで、当時の私は、もっともっと幼かったので、そんな明かな格差を見せつけられて拗ねた。

何となく感じていた格差を目の当たりにして、その当時の私の最大級の感情をぶつけた。

怒り。

嘆き。

媚び。

へつらった。


でも、しばらくして悟った。

無駄だと。


拗ねて、悪いことしても怒られるだけ。

その内、無視されるだけ。

イイコになって見せても、無視だし。

子供なりに、お手伝いしても、邪魔してって怒られる。

確かに子供の手伝いは不十分な事も多くて、怒る恰好のネタになるだろうとは思う。

なのに、

とにかく“下手に手伝ったら怒られる。”

と、学んで手を引いたら

「お手伝いも出来ないなんて!」

と、怒られる理不尽さ。

もう、どうしたら良いんだよ。

って子供心に思って。

親の顔色を見ながらお手伝いをするようになった。

大人の顔色を窺う気持ち悪い子供が誕生した瞬間だった。

ただ、この忖度力と言うのは、外の世界では大変重宝した。

小学校では覿面だった。

先生の顔色を窺う。

怒られそうになる前に、クラスメイトを止める。

宿題のチェック。

提出物もチェック。

図工に必要な物、空き箱とか空き缶とかもストック分も含めて準備したり、とにかく先回り先回りして準備した。

私のいるクラスは楽なんて、先生のお墨付きをもらった。

『24時間先回りする日々を送っていますから。

並の子供ではありませんよ。

私は。』

そんな変な自信まで持っていた。

身体が小さくて体力が無いから、観察眼と言うかそればかり磨いていた。

そんな目で周囲を見て、口を挟む。

小さな先生みたいな私はクラスメイトからは敬遠されていた。

恰好もお古ばかりでボロボロだったから、遠巻きにされるのは理解できる。

ちなみになんでボロボロお古だったかと言うと、両親が全て妹につぎ込んだからだ。

自分で言うのも何だが、私は余りかわいくない。

着飾り甲斐が無かったのだろう。


お陰で。通常なら長女に新しい物を買い、妹にお下がりという流れなのだろうが我が家は逆になっていた。

私には祖父母・親戚から押しつけられた古着や。玩具。

既に経年劣化で弱っているからと言って、私が使ったら捨てて、妹は新品を買って貰えていた。

その頃は、祖父母の手前、お古を使わなくてはいけないから、せめて次女には新品を。

なんて言い訳していたようだ。


ただ、妹の方が成長が良く体格が逆転しても、事情は変わらなかった。

妹は新品を買って貰えていた。

妹のお下がりは、何故か他の人。知人へ。

そして、私には相変わらず何処から調達するのか知れないお古。


そして、妹からのお下がりは人にあげられないような汚れた物が回ってくるようになった。

「お前は入院費でいっぱい金がかかったからな。これで十分だ。着れるだけありがたいと思え。」

そんな言葉と共に両親が私に与えてくるのだから、妹もそれが当然だと思ったのだろう。

成長するにつれ、妹が蔑んだような視線と共に、

「あげる。」

と、渡してくるようになった。

何も言わないと礼すら言えないと両親に誹られるから、

「ありがとう。」

と、感謝の言葉を口にして受け取った。


そんな風に一番近いはずの人間、家族から扱われているのだから、人から敬遠されることなんて何とも思わなかった。

産みの親すら敬遠する。

人から離れられるの=(イコール)生きてた年数。

このキャリアは未だに更新中の私にとってクラスメイトの遠巻き視線など全く気にならない。

だって彼らは私に何もしてこない。

せいぜい、ボソボソ言うだけだ。

全然害が無い。

それに、クラスメイトだって私がいた方が便利なのだ。

私に助けられた奴は沢山いる。

私は恩を売りつつ、敬遠されつつも、虐めはされないポジションを確立させていった。

要は便利屋である。

何となくの流れで学級委員なども務めるようになった。

各クラスの学級委員が集まると、私だけがボロッとした恰好なので、浮いたが実務には問題ない。

恰好以外では問題無く学校生活を送る私は非常に先生の受けが宜しかった。

同情票もあったろう。

親に放置されている、かわいそうな子。

が、努力して優等生でいる。

その事実が先生方に刺さるようだ。

先生方は何とかしようと親に働きかけてくれたらしい。

無駄な行動である。

もとい、余計な行動である。

寝た子を起こすような事はしないで欲しい。

事態が悪化するばかりである。


親にとって見れば、私はダメッ子なのだ。

不細工で身体が弱くて迷惑をかける存在。


先生方に、優秀だと言われ、扱いを改善するように指摘されるのは腹立たしいのだ。

家では大事な大事な妹ちゃんが至上であり、私はクズ。

私の役割は優等生ではない。

私の役割はサンドバッグなのである。

親は私を貶めて、妹を上げる。

すると妹は機嫌が良くなる。

両親も嬉しくなる。

と、言うわけだ。

だから、私が優秀だと妹をご機嫌にさせられない。

親にとっては困った事なのだ。

親切心から我が家に介入しようとした先生達には、私はしおらしい雰囲気でお願いすることにしている。


頑張って良い点数を取ったテストを見せても反応が返ってこなかった事。

むしろ、怒られる事。

良い成績を取って何故怒られる?

学校では凄い褒められるのだが?

訳がわからず悩んだ事。


もっと頑張ってテストで良い点を取る。

親に見せる。

怒られる。

謎ループを繰り返すこと数回。

ようやく悟った事。

かなりの精神的痛手を被って、ようやく悟ったのだ。

放っておいて欲しい。

早々に独り立ちをして、あの家からは出て行くつもりでいるのだから。

そう告げると、先生は納得してくれた。

あの頃は、今よりももっと制度が整っていなかったし、先生達も生徒は私一人では無いのだから納得したら手を引くのは早かった。

その代わり腫れ物扱いをしたり、中には参考書をくれたりする先生もいた。

無料でこんなにと、思うほど結構な数集まってしまった。

大変、恐縮したが、後に学校に配られるサンプルの一つであることを知り安心した。


沢山の参考書。

問題集。

他に娯楽の無い私は、暇つぶしにそれを繰り返し解いた。

ポンコツ記憶でも繰り返せばまぁまぁの能力を見せてくれる。

すると、成績が上がるのは必然だろう。

しかし、私は、悩んだ。


良い成績を取れば取るほど、攻撃の燃料を与えるのだ。

どう誤魔化すのか。


頑張っても認められないのは非情なるストレスだ。

しかも、着火点が低いらしく、もの凄い勢いで燃えさかる。

バーベキューの火起こしとは全く違う。

あれは酷い。

炭火はド素人の私たちがやると何時までも煙で燻っている。

火を起こすと言うのはとても大変な事なのに、人間の沸点というのはもの凄い低い事もあるのが不思議だ。

あっという間に、バーナーの青い火くらいの高温で燃えさかってしまう。

話は変わるが、私はバーナーの青い火が好きだ。

綺麗に調節出来て、良い形と色に炎が出来ると達成感がある。

なのに、先日、先生は、

「バーナーは危険なので、徐々に実験用カセットコンロに変わります。」

と、言った。

とても悲しかった。



久しぶりに悲しみを感じた出来事だった。

ちなみに、私は悲しみを感じない。

いや、感じにくい。

いや、違う。

家では殆ど感情が動かない。


家では感情をなるべく動かさないようにしている私だが、それでも揺り戻しというのだろうか。時々感情が、不満が、一気に私を襲ってくるときがある。

一人、自室に籠もっていると何とも言えない気持ちになる。

あんな扱いでありながら一応、自室と呼べる物を与えられている事には感謝はしているのだが、これが小さい。

妹に比べると小さい。

遙かに小さい。

多分、元は物置だったんだろう。

二畳しかない。

荷物は布団しかない。

衣服は段ボール箱に入れている。

スーパーで綺麗そうなのを貰ってきたのだ。

収まるだけしか衣服は持っていないので不便は無い。


ハンガーにかけなければいけない物は壁にフックが取り付けられているのでそこにかけている。

シンプルで掃除のしやすい部屋だ。

それに目立つ物を置いておくと妹に強奪される。

何故か、妹は家族にとても大事にされ、物が満ちているはずなのに、私の物を奪いたがる。

優秀生徒賞みたいなのを貰ってしまって、メダルなんかついてきたりすると、持っていってゴミ箱に捨てられてしまう。

人の物をとって行くのはいけないという最低限の倫理観も身についてはいない。

両親は教育を誤った。

妹は大事にされすぎて性格がねじ曲がってしまった。

かく言う私も偏屈になった自覚はある。

姉妹格差。

全く良い事は無い。

愛されまくった方は増長し、

蔑ろにされた方は卑屈になる。


どっちも幸せにしない。

凄い教育方針だ。


もう少し考えれば良いのに。

我が親ながらどうかしてると思う。


だから、万年平社員なのだ。

だから、母も身の丈に合わない夢を見て、お受験なんかさせ通わせるのだ。

お受験、もちろん妹のだ。

有名、私立のお金持ち幼稚舎に。

幼稚舎ということで、上の学校がある。

上の上の学校もある。


当然、セレブが集まる。

生活レベルが違うのに、ハイヒール履いて、更に背伸びしているような事をしている。

その内足をくじくだろう。

そうなっても、何故か私が悪いことになるのではないだろうか。

まぁ、あの人達、頭おかしいからな。

そういうこともあり得るだろう。

あぁ、はっきり頭おかしいと言ってしまった。


我が親ながら滅茶苦茶言っている自覚はある。


こんな風に親をこき下ろさなければ私は心の平穏を保てない。

もっと言うと、私もおかしい。


多分、私は私じゃ無い。

と、思っている。


だって私。

年齢にそぐわない、達観ぶりを身につけている。

もしかしたら、転生系の主人公なのかもしれない。

早く前世の記憶蘇らないかな。

そのノリで、私は私に言い聞かせた。

私は、私では無い。

だから、可哀相な子供はいない。

あれは家族ではない。

血が繋がっただけの他人である。


そんな物語に縋りたくなったのには理由がある。

性根の腐った妹が、某灰被り姫風になったのだ。

突然メルヘン路線な話をし出しておかしいが、まぁ事実だ。

世の中には、色んな事を信じている人がいる。

転生やり直し系。

他力本願シンデレラ物。

逆行復讐物。

色んな物があるが信じるのは自由だ。

かく言う内の両親も良い年なのに、シンデレラ物を信仰しているコバンザメなのだ。

妹が玉の輿に乗って、自分達もその恩恵に預かろうという恥知らず。


そんな夢を見ている我が家は、いずれ破産すると思っていた。


何といっても妹が玉の輿に乗ると根拠無く信じて、“有名・私立・セレブ・幼稚舎からの一貫校”に入れたのだから。

もう一度言うが、父親はしがない商社のヒラ社員(頭悪い)だ。

父親の事を頭悪いと連呼しているが、そう思わないと私は私を保てない。

だって、私の名前すら覚えていない人だから。

私の話した内容が理解できないような人だから。

私が持ってきた学校のお知らせも覚えていないような人だから。

私に関しては超絶頭悪い・ポンコツな人なのだ。

だから、かわいそうな人なのだ。

仕方ない人なのだ。

私はそう思って過ごしている。


それはともかく、私が家計管理に関してうるさいのには理由がある。

私が家事一切を取り仕切り、その為に色々勉強したからだ。


私には遊ぶ為のお金がない。

仕方なく、暇つぶしの為に本を沢山読んできた。

なんでも読む。

小学校高学年頃から、主婦雑誌などの“お悩み家計相談”を読むのを好んでいた。

他の“普通”の家庭の空気を感じられる記事が好きだったのだ。


その内容で我が家の家計診断をすると完全にアウトなのである。

身の丈にあった支出に抑えましょうなんて言われるはずである。

少なくとも私診断ではアウト家族なのだ。


なのだが、それを可能にしてしまう出来事が起きた。

妹が有名・お金持ち・私立幼稚舎から一貫校でセレブ男子に見初められたらしい。

と言うことで、彼は我が家に資金援助をしたようだ。

凄いな。

セレブ男子。

金で囲おうとする性根がおかしい。

しかし、援助のお陰で家計は持ち直したので悪く言うことはできない。

そう思っていたら、あるとき、家に車がやってきた。

高級外車だ。

セレブ男子のお家からのプレゼントらしい。

それを見て、私はやっぱり金持ちって頭おかしいって思ったのだ。


普通のしょぼくれリーマンが35年ローンで建てた家に、高級外車。

そもそも車庫にキツキツで誰も乗れない。

車庫から出せない高級外車。しかも先っぽがちょいはみ出し。

何だかシュールな光景ではある。

これは売った方が良いのでは。

と、思ったが、親はありがたがって受け取っていた。

維持費が家計を圧迫する。

オブジェで生活が出来ない。

そんな事は言えないので、節約生活を送っている。

風呂の残り湯で洗濯をし、小まめにコンセントを抜き(余り効果ないらしい)涙ぐましい努力をして水道光熱費を削り、食費を削っている。

主婦雑誌を愛用して家庭菜園を作り、景品狙いで年賀ハガキの余りで雑誌のプレゼント応募にもハガキを送っている。

世の中ネット社会だが、私は携帯端末を持たせてもらえないので他に方法は無かった。

当然の如く妹はセキュリティが大事だと持たせてもらえていたが。

確かに妹に何かがあったら資金援助が無くなるので、妹の身柄は大事だ。

そこに私は不満は無い。


ただ、問題はもうすぐ妹が高校入学する。

私はもうすぐ卒業だ。

妹は成績はソコソコだ。

だが、大学は行かせてもらえるだろう。

私は成績的に問題は無いが、親が許してくれるだろうか。

祖父母も、もう良い年で頼ることも出来ない。

最悪就職しなくてはならない。

高卒と大卒では初任給が変わってしまうから大学は出たいのだが。

将来について、進路指導の先生と何度も何度も話合う。

幸い先生受けは良いので親身になって話を聞いてくれた。

両親避けの話も纏まってきて、私の自立も目処が立ってきた。

少し安心したタイミングで学校に私を訪ねてきた人が居た。


全校放送で呼び出され、職員室に何事かと思って向かったら、青ざめた担任の先生が私を校長室に連れていった。

何が起きているのかと思えば、素晴らしく美しい男がいた。

ドンとソファーに腰掛けている。

若く、美しい。

何だか威圧感がある人。

その後ろにもお付きの人っぽい黒服の人がゾロって控えている。

その人も尋常じゃ無い美しさだった。


何この人達。

人外レベル。

って思ったら、

何か、本当に人外らしい。

自称“あやかし”なんて言って特殊な能力を持っている。

なんて言う。

ヤバい。

自分で自分を人外だと名告る人、碌な人じゃ無い。

私は危機感を覚えた。


碌な人じゃ無い人は、よりによって校長室で、私に運命の番だとか何とか言い出した。


ヤバい。

こんな所で。

ドン引く私を余所に彼は一方的に話し続けている。


「あなたは俺の番だ。」

「ツガイ。」


「唯一の相手。」

「ユイイツ。」

突然すぎて片言になってしまう。


どうやら、彼は、本当に人外らしい。

で、力があるらしい。

良くわからないが。


私が懸賞金狙いで送った幾つかの物。

例えば、“ほっこりした話”

“母の日に感謝を”

“普段言えないありがとうを”

みたいなお題目でエピソード募集みたいなのに応募したののどれかの選考をして気づいたらしい。

送った物の匂いで気づいたんですって。

何その能力。怖い。


それで私の事を調べて、調べ尽くして、私が家で冷遇されていて、なんなら妹のお相手・・彼も人外仲間だったらしくって彼から私を守りたいからってお迎えに来たんですって。

よりによって学校に?!

これは大変な人ですよ。

更にドン引きました。


それで、このまま帰ろうと言われても、イヤだって言いますよね。

匂いで人を判別する変態に好んで付いて行く人いるでしょうか。

いくらお金持ちで、顔が良くっても。

お断りしましたら、ざわつくのはお付きの人達。

いや、なんでこんな状態で“ハイ”って言うと思ったの?

おかしいよね。

校長先生が

「こんな良い話を。」

なんて言っている。

担任は黙り込んでいる。

うん。

先生は良い人だ。

私に無理について行けなんて言わないんだもん。


私は親には恵まれなかったし、親友みたいな人はいなかったけど、先生には恵まれた。

先生は貴重な時間を割いて私の将来について相談に乗ってくれた。


「遠慮はいらない。もう無理はしなくて良いんだ。苦労はしなくて良い。何もしなくて良いんだ。辛かっただろう。何でも言ってくれ。何でも願いを叶えよう。君は無感動になっているらしいね。失った感情も私の元にくれば戻るだろう。大事にする。」

私の番と言う人は無遠慮な言葉で私を打ちのめしてくれる。


感情が乏しくなった私。

だけど、感じる事はある。

私の思いだってある。

少なくとも、私の苦労を知って、何もしなくて良いなんて先生達は言わないでくれた。

それに対して、この人は。

溜息が出る。

「何でも言っていいのですか?」

我ながら凄く低い声が出た。

「あぁ、何でも言ってくれ。」

「では、私は私の人生を歩みたいので一緒に行くことはできません。」

きっぱりと願いを告げた。

続けて私は自分の思いを口にする。

「人生は何が起きるかわかりません。だから、私らしく生きたいのです。」

「私の番として生きること。それがあなたらしさだろう。」

そうハッキリ言い切ってしまうのが恐ろしい。

俺の為に生きろ。

みたいなの。

自分が傅かれて当然って人はそういう考えなんだろうか。

恐ろしい。

「例えば、私があなたが言うツガイだとして、あなたの元に行ったとします。翌日あなたが倒れていなくならないという保証はありませんよね。そうしたら私はどうなるんですか?

“俺は死なない”とか。

そういう精神論は要りません。」

「君は失礼だな!」

お付きの人が言う。

「いえ、例えと言いますか、確率論です。絶対無いとは言い切れません。人生は何があるかわからない。ってことです。例えばですね。

今から、

『ありがとう。』

『さようなら。』

と、挨拶して家の外に出て、ちょっと飲み物でも買おうとコンビニに寄ったとします。

そこに踏み間違いでアクセル全開の車が突っ込んできた。とか、交差点に車が突っ込んできたとか。昨今では自転車っていう例もありますね。特に電動自転車。

あれで耳にイヤホン突っ込んでいる人。

最悪です。

私は何度かひかれかけました。

手に何かスマホなんてもっていたら最悪度数があがります。」

私情が籠もった四方話を付け加えてしまって脱線すると、

「そんな危険運転をする人は抹消する。」

なんて呟きが聞こえた。

やだ。本当にヤバい。この人。

「止めて下さい。世の中には一定数、うっかりとか、間違いを犯す人はいます。

自分が危ない事をしている自覚はないのです。そういう人はいなくなりません。危険だという周知する事は必要ですけど、そんな労力を使うくらいなら、もっと建設的な事に使いたい。

その人達を罰すると言うのなら、かく言う私も、やってはいけませんが、信号無視した事もあります。

丁度、赤信号に変わる瞬間。

急いでいたから、横断歩道じゃ無い所を渡ってしまった事もあります。

ポイ捨てしていけない所にゴミを捨ててしまったり。

例をあげればいくらでもやらかしているのです。

自分が清廉潔白では無いのに。

人にそんな事を求めてはいけないと私は思っているのです。」

「君はなんて・・慈愛の心が・・。」

ウットリとした呟きが聞こえた。

いや、だから違うよ。

私は無視して喋り続ける。

「それに、妹の彼氏から私を保護すると仰いますけど。彼に何もされてませんよ。ただ放置されてただけです。」

「それが問題じゃないか。君だけのけ者にしていたんだろう?」

「でも、仕方が無いと思います。デートに親がついていくのおかしいって思ってましたから、私抜きで食事会に行くのも別に何とも思わないです。うっかり、私に甘い顔をされて、妹に嫉妬されても面倒ですし。」

「面倒?」

「えぇ、面倒ですよ。どっちの機嫌を損ねても面倒ですもの。妹の彼氏は我が家のスポンサーなのです。彼がいなければ家は成り立ちません。

だから、別に多少の事は私は目を瞑ります。そうしないと破産ですからね。あなたは一方的に私をかわいそうって言うけれど、彼氏さんは我が家にお金をくれました。かわいそうって言葉よりもずっと助けてくれてたんです。だから感謝してます。」

信じられないという顔をされる。

「だけど、私は君を愛しているんだ。」

この流れでどうしてそうなるのだろう?

良く考えがわからない。

「・・・・・貴方が私を愛おしいと言ってくださるのはわかりました。」

「じゃあ!」

「いや、受け入れられません。だって、何も考えなくて良いよ。

何もしなくて良いよ。なんて言うのは受け入れられません。

何もしない人物を求めるのであれば、それは人形でも良いのではありませんか。

だって、あなたの願望を聞くと、あなたがしたい事ばかりで私のしたい事は何も含まれてませんよね。」

シーンと部屋が静まりかえった。

あれ?

私言い過ぎた?

まぁ、いいや。


「私は、私のしてきた努力があり、私の人生設計があります。

それを踏みにじられると、私を軽んじられているように私には思います。

私は、私は別に何も感じない訳ではありません。

感じないように振る舞っているだけで。

そう振る舞う為に、私は努力をしてきました。

全て、揉め事が起きないように生きていくためです。

学業で良い成績を収めたのも他にやる事が無い事もありましたが、将来自立する為です。

そして、その気持ちを保つ為に、

私は誰も信じないと決めました。

今、この話をするのは決意を新たにするためです。

貴方が、ツガイと言う物に運命を感じようが感じまいが私は何もわかりません。

何も感じないように生きてきましたので、揉め事に巻き込まれない限り、私は他の人の心情を思いやると言うこともしません。

揉め事を回避する為だけに使います。

今、ここまで私の気持ちを話すのは、はっきり言わないとわかって貰えないと思ったからです。

世の中にはシンデレラのように上位の男性に見初められて、結婚して幸せに過ごしました。と、言う話を好んでいる女性がいる事も知っています。

でも、私はそうではありません。

私を幸せに出来るのは私だけ。

いえ、幸せなんて基準はわかりませんね。

私を不幸にしないのは私だけ。

この先、安全な住処に住めて、飢えずに食事できて、時々ちょっとご褒美に贅沢な食事をしたり、素敵なバッグを買ったりできるような生活が送れるように私は努力をしました。

それだけの些細な願いを自分の手で叶える事は何にも代えがたい喜びなんです。

人にただ与えられるだけでは得られない。

自分が苦労して、汗水垂らして、理不尽な目に遭って、それこそ爪が掌に食い込むような歯ぎしりが癖になってしまって歯が悪くなってしまうような思いを乗り越えて得た物は、私だけの財産なんです。

それを祝う物は、数百円のコンビニスイーツだって、どんな物にも敵わない最高級の私だけのご馳走なんです。

その幸せを、あなたは奪うのですか。

それが私を愛するというあなたの思いなのですか。


でしたら、私は貴方をいらない。

そういう結論になる訳なんです。」



きっぱりと言い切ると何とも言えない爽快感が湧き上がった。

それに反して部屋の中の空気の冷え切った事。

冷たい空気を吸い込むと、まるで冬の朝のような新鮮な空気を吸ったような爽快な気持ちになった。


この後どうなるのかわからない。

でも、私、言い切った

この瞬間の私は、謎の満足感でいっぱいになったのだった。




+++++++



このシリーズ色んな話の削った部分をつぎ込んでくっつけて見た話。

筋は一緒になってしまう。

所どころ同じ表現もあるでしょう。

でも、もったいなくって。

すみません。


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