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世界のつくりを説明する試み  作者: もりを
生命編
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17・ゲノム、って

17・ゲノム、って


生命前駆体がいっぱしの生命体の姿となるところまで進んでしまったけど、申し訳ないことに、また話をさかのぼらなきゃならない。


分子生物学の前段階の、哲学の部分にまで。


それは、「生命とはなんぞや?」という根源的な問題だ。


わが物語は、鉱物から有機物をつくり、アミノ酸を構成するところから作業を開始したが、実は生命とはそういうものじゃない。


例えば、最もシンプルな生命体に必要な材料を集め、人為的にそれらを正確な構造に組み立てたとしても、それで命が吹き込まれ、動き出すというものじゃない。


根源的なものが足りないのだ。


そこで、哲学(神さまではなく)の話になる。


生命づくりには、議論すべきふたつの面があり、それはすなわち、生命「体」という物質的な側面と、もう一面は遺伝子というおよそオカルトな問題だ。


生命「体」とは、要するにこの世界における営みを引き受ける箱であり、具体的で実用的な物理上の存在だ。


一方の遺伝子とは・・・ここでは遺伝情報の総体という意味で「ゲノム」という言葉を使うが、こちらはその箱の中に据えられた命令系統の部分で、哲学上の抽象的観念とでも言いたくなるようなやつだ。


DNAはモノだが、ゲノムは情報そのものなんだ。


これはもちろん観念でも幻想でもなく、事実としてそこに「在」って、実際に物質面(肉体)を司ってもいる。


が、意識や考えや自己の認識という脳の働きでもない。※1


ここをごっちゃにしてはならない。


「あなたという自覚」と「あなたをつくり上げてるゲノム」は、別モノと言っていい。


生命あなたは、突き詰めれば、ゲノムという形なき情報の命ずるところによって物質を構成させられ、行動を操作される機械だ。


ゲノムは、あなたという意識(意識というあなた、と言ったほうがいいかもしれない)の上層に在り、地上の生命全体をその歴史上に渡って支配しつづける、世界の総体意思のようなどでかいメカニズムなんだ。


われわれはこの物語において、(デオキシリボ)核酸という物質から遺伝と増殖を実現しようと試みてきた。


しかし、遺伝物質をつくるのはまさにその中に収まるゲノムなんである、という「卵が先かニワトリが先か?」のパラドクスを解決する必要がある。


つづく


※1 これらは純粋に物理的な現象だ。

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