16・ダーウィン進化、って
16・ダーウィン進化、って
ようやく性能を得たからだだが、せっかくつくり上げたところで、あっけなく壊れ、滅形し、崩壊し、霧散し・・・何度も、何度も、何度も、生まれては消え去っていった。
それは彼ではなく、からだをつくり上げることに成功した彼の仲間たちが、だ。
その淘汰の結果、彼が残った。
最も生き残るにふさわしい、彼のからだのみが。
だからと言って、彼にはなにができるわけでもない。
ただエネルギーをつくり、そのエネルギーをまたエネルギーをつくるという作業に当てる、自転車操業だ。
ところが、投入したエネルギーは、投入した以上の仕事を決してせず、つまり等量のエネルギーをつくり出すことができない。
エネルギーに仕事をさせると、必ず再利用不能な熱のロスをつくり、これが熱力学の第一法則が言うところの、エントロピーの増大となる。
このロス分を彼は、外からのエネルギーでまかなう必要がある。
チムニーに身を寄せてる間は、周囲に満ちた電子の流れを利用すればいい。
しかし、彼はそのぬるい立場から独立をしたかった。
自分のことは自分でやる、という、これまた生命体としての根源的な突き動かしがあった。
そして彼は、やってのけた。
無限に近いほどのおびただしい実験をくり返し、役立たない方法を捨て去って、ついに最後に残った最善の方法論を採用した。
新陳代謝・・・すなわち、エネルギーの足りない分を補うだけの物質を外界から得、内部で利用可能な状態にまるめて用いる、という補完方法にたどり着いたんだ。
摂取と排泄。
が、実はこれまた彼が自覚してやったことじゃない。
自然による自律的な営みの結果として起こった、最古のダーウィン進化だ。
つづく




