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世界のつくりを説明する試み  作者: もりを
生命編
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15・創発、って

15・創発、って


彼は起動したが、実はこのお話が語るところのそこまで洗練されてたわけじゃなかった。


リン脂質はもっと先の世に発明されるものだし、エネルギーとして活用する元気玉もATPなんて強力なものじゃなく、もっと粗末で簡素なものだった。


RNAの機構は取り込んだが、こいつで自分のコピーをつくるなんて高等な仕事は、まだまだ望むべくもない。


だけど彼は、生命体としての最低限の体裁を整えた。


たまたま材料がそろい、体内で各部位が噛み合って連動しはじめたからには、この活動をつづけようという根源的なものに突き動かされた。


特筆すべきは、彼の後ろ盾に、神さまの類などいなかったことだ。


もしも神さまがいたら、その奥に神さまをつくるべき絶対者が必要となり、さらにその絶対者をつくるべき超越者が必要となり、その超越者をつくるべき何者かが・・・という無限後退が発生する。


そんな何者かが最後の最後に存在するとしたら、それは自然の摂理そのものだ。


自然が神さまを・・・いや、その先にいる彼をつくる以上、神さまと絶対者と超越者とその他中間管理の何者かはなきものとして取っ払ってよろしい理屈となる。


そんなわけで、彼は神さまの力を借りず、自然の法則によって脈動をはじめたんだった。


ここには「創発」という、自然が定めたイレギュラーな力が絡んでくる。※1


温度によって固体が液体になり、液体が気体になり、あるいは固体がいきなり気化することを「相転移」というが、そうした階層を上ることによって起きる激変現象が彼の身に起こったわけだ。


つまり彼の肉体は、単純な部位の働きの総和じゃなく、局所における特徴的要素の相互作用によって複雑な組織化がなされ、足し算でなく相乗したような効果が発揮されたために、物体から生命体へと跳躍を遂げたんである。


彼が集め、適切に編み上げ、総合させた物質塊は、無機的な素材からホップし、ステップし、ジャンプをして、生理というステージにまで到達したんだった。


つづく


※1 まさにこの点を、宗教者は「神さまが起こした奇跡」と呼ぶわけだが、なんてことはなく、神さまとは自然そのものなのだ。あらゆる宗教は、自然の力を擬人化して神さまという存在を立ち上げることに利点と納得「感」を見いだしたにすぎず、またあらゆる宗教はそれを悪用して人々をコントロールし、お金を儲ける。神さまとは、正解の意味でも俗悪な意味でも、システムそのものなのだ。

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