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9・ビッグバンって
9・ビッグバンって
おびただしい数の陽子(と中性子)が、重力のポテンシャルで周囲をゆがませ、ゼロ次元をこじ開けはじめた。
うがたれた針先ほどの小穴は、特異点という「世界の新規オープン地点」であり、ぼくらが生きるこの時空間の萌芽だ。
その一点に、後の世界を構成するすべての物質が集中する。
エントロピーが最小値にリセットされ、瞬後、時空間が爆発的に開いていく。
電荷を+に設定された陽子たちが、ものすごい反発力で飛び散ったんだ。
どっかーん!!!・・・と音は鳴らなかった。
だって、空気がまだないからね。
その代わりに、すさまじい光と熱が発生した。
あらゆる種類のエネルギーの開放、あらゆる種類の波の放射散開だ。
飛び散った陽子たちの質量で、時空間はどんどんとねじくれながら耕されていく。
宇宙の拡大膨張が開始された。
ただの点だった時空間の穴は、ひろがりとなり、奥行きとなり、要するに容積となって、宇宙のふところを巨大な「スペース」へと膨らませていく。
エントロピーが不可逆な増大(エネルギーの散らかり)をはじめ、過去から未来という時間の方向が定まった。
ビッグバンという奇跡が起き、ぼくらの世界が誕生した。
つづく




