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世界のつくりを説明する試み  作者: もりを
意識編
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21・自分、って

21・自分、って


彼は、みっつの眼を持つことで空間上のひろがりを知り、二次元世界を生きることになった。


ただその視界のバージョンアップは、明滅するスクリーンがX軸とY軸でエリア分けされた、というだけで、二次元と聞いて誰もがイメージするアニメーションのようなものじゃない。


光を三点の受容体で受け取って平面にシグナル配置するだけなので、クリアな風景は存在せず、そこにはただ右左とタテヨコだけがあるんだ。


ここから先は、四つ眼が試され、五つや六つ眼が試され、さらなる複数眼が試されたことだろう。


が、結果は同じで、彼は二次元よりも先へは進めなかった。


ところが、そこを限界とあきらめなかったゲノムは、世界の更なる更新を求め、劇的なイノベーションを果たす。


なんと「複数の眼をひとくくりにまとめて多ピクセル数を持つ片眼とし、それを2セットにして」、彼の形質に組み入れたんだ。


進化によっておびただしい神経を手に入れた彼は、それを盛大に束ねたんだ。


すると、彼の視界についに奥行きが、深みが、立体感が・・・すわなち、三次元空間が立ち現れた。


3D動画をはじめて見たときの感激を、きみは覚えてるだろう。


あれなんだ。


彼は、自分の閉じた系の外側に、無限のひろがりがあることを知った。


そこには森羅万象が配置され、独立しながら連動し、そんな活動をするひとつひとつが彼との相関関係で結ばれてるようだった。


彼はまさしく、目を見張った。


自分がその舞台に「いる」のだと、自覚した。


神経系がいっせいに目覚め、開き、求め、「知ろう」という衝動が湧き起こった。


そうして、ふと根源的なことに気づいた。


外の世界とは、内なるなにものかと相対的なものなのだ、と。


閉鎖系の内と外という理解は、「わたくし」という普遍的存在の理解につながっていく。


彼の中で果てしないまでに伸び、展開し、細分化し、精密化した感覚神経系は、そのすべての情報を中枢機能である頭部に集約し、こうしてできた脳は、情報へのカウンターとして運動神経系に対応を指示するまでに高度化した。


つまり、かつて純粋に自律的だった彼の活動は、今や主体的と言っていいまでに能動化している。


彼の中に、ついに「意識」なるものが芽生えようとしている。


つづく

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