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世界のつくりを説明する試み  作者: もりを
意識編
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20・方向とひろがり、って

20・方向とひろがり、って


彼が備えた光子捕獲装置、すなわち「眼」は、神経系によって肉体組織とダイレクトに結ばれることで、個体の生存率をぐんと高めてくれる。


そのものに触れずとも、なにかが目の前に近づくだけで「逃げろ」の警戒信号が出され、危険を自動的に回避できるんだから、こりゃ便利だ。


対象物に触れないと、そこになにかがあることを感知できなかったこれまでとは大違いだ。


この単純お知らせ機能は、彼が主体的な行為者として覚醒する前段階の、機械的な反射反応システムと言える。


これを、遠距離察知機能である聴覚、対象物の質を識別する嗅覚などと連動させれば、より明確な世界観を築くことができそうだ。


そしてこれらの全自動式のからくり全体を洗練させ、刺激→反応のみの活動から、状況判断→意図的行動という、より能動的な個体へと自身を進化させていきたいものだ。


というわけで、めでたくひとつ眼を獲得した彼なんだった。


進化はこの「着眼」のステージが最も困難で、それに比べたらここから先の展開は、出来合いのものを応用し、更新していけばいいので、時間をかけさえすればわりとイージーに進める。


ひとつ眼から抜きん出ようという圧にさらされるゲノムは、まずは最も安直に、ひとつをふたつに増やそうとした。

こうして、後の世代に進んだ彼は、進化の過程でふたつめの眼を手に入れる。


あたりまえに思えるこのアイデアだが、効果は絶大だ。


なにしろ、ひとつ眼だと点でしか確認できなかった外界が、ふたつ眼になると線で解釈できるようになる。


ゼロ次元だった世界が、一次元になるんだ。


具体的には、ふたつの眼=2ピクセルが時間差で反応することで、目の前の相手がどちらからどちらへと移動したかを理解できる。


いるかいないかだった対象物の情報が、位置と動きを持つことになったわけだ。


点滅のみの視界世界の中に、「方向」という新基軸が備わった。


気をよくしたゲノムは、さらに眼をみっつに増やす。


線だった世界が、いよいよ面になる。


彼は世界の中に「ひろがり」を感じはじめた。


つづく

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