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世界のつくりを説明する試み  作者: もりを
意識編
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4・増殖、って

4・増殖、って


生命体としての体裁を確立した彼は、今や自分を分身させて増やすこともできる。


なんたって彼が内蔵するRNAの塩基配列には、自身の構造情報ばかりか、その材料の集め方から組み立て方までがコードされてるんだから。


パズルのピースのような塩基のジョイント部分は、対となる形状を持つ相方部分としか合体(水素結合)できない。


つまり、そのジョイントの相方は、正確に彼の求める物質ということになる。


こうして素材を選り抜いて順序に沿ってコンプリートし、RNAらせんのスタートからエンドまでジッパーのように噛み合わせれば、情報が正確にコピーできる。


コピーされた相方の情報らせんは、ジップから独立して体の材料を探し、集め、部品をつくり出し、もう一体の姿かたちを立ち上げはじめる。


細胞内に、もうひとつの細胞をつくり上げようというわけだ。


第二の細胞が完成したところで、本体から分裂。


彼は、自分と同じ構造のもうひとりをつくることに成功した。※1


新しくつくられたコピー体には、彼のRNA構造・・・つまりゲノムがそっくり再現されてるので、彼のコピーもまたコピーをつくることができる。


こうして、彼の大分裂が・・・すなわち、増殖がはじまった。


世界にたった1人きりだった彼は、2人になり、4人になり、8人になり、10世代を経る頃には計算上では1024人にもなる。


もちろんその中には、生まれたはいいけど不慮の事故に遭って失われていく命もあって、増え方は単純な幾何級数グラフを描くわけじゃない。


それでも、彼と彼のコピーは自身の命が失われるまで果てしなくコピーをつくりつづけるので、時間がたつごとに彼の数はおびただしく増え、その増加曲線はますます急角度を極めていく。


たちまちチムニーとその周辺は、彼によって・・・いや、数々の生命体によって埋め尽くされていった。


それはまるで、生命の楽園だ。


この楽園を、生態系と呼ぼう。


どこを切り取ってもほとんど一様で、彩りのまったく乏しい単純な系だけど、とにかく彼は生命の世界を膨張・拡大させていく。


そして彼は、新たな環境に飛び込んでいく。


生命の大冒険のはじまりだ!


つづく


※1 ある意味、彼はこのついに時点で・・・すなわちふたりになった時点で、はじめて生命体となったと言える。生命体の定義には「増えること」とあるわけだから。

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