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ぱんけーきイズでっど  作者: アラタオワリ
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# 喋れないきれいな子(2)

 海上はさらに続けた。

「否、もういいんですよ。下手に病院に行けば金がかかるから。そんな金もない。あなた方、夫婦に夢を託したけど借金が増える会社のせいでね。

少しそのことも踏まえて、もっと大衆向きのライトなシステムの開発をしてもらえれば、こいつにも父親らしくできたかもしれない。

いやいや、冗談よ。ハハハハハ」

海上には文句を言えなかったが、源蔵の顔を僅かながら抵抗するように睨んだ。

「なんだよ、お前のせいなんだから。生意気な。

プレッシャー掛けたら辛いと思って、好きにやらせてあげたのに。

夫の優しさだよ。そんな、態度をするならちゃんと償えよ。太郎兄い、坊ちゃんはこいつに任せて、早く着替えて、赤澤理事長のところへ行きましょう。零香、頼むぞ。

そうだ、秀人君の行く先が決まるまでこいつに面倒見させましょう。

なあ、零香いいだろ、お詫びとして」

「お詫びって何。フウを仕事の邪魔になるからと私の実家に預からせたのに、他人の子を面倒みろって、どういうこと・・・・」

そう思ったが、この子の不憫さに我が子を重ね合わせ我に返った。

「じゃあ、頼む。このまま俺たちは営業に回ってそのまま、うちらは海外へ出張だから。お前は、しばらくここに秀人君とやっていなよ」

零香は秀人の頭を優しく撫でた。きれいな子の表情にスッと涙が流れて、壊れた笑いは少し緩やかに悲しみを滲ませた。

男どもはそそくさと事務所を出て行った。居酒屋で打ち上げでもするのだろう。

遠くなりながらも笑い声が止まないので、零香は膝立ちをすると視線を合わせながら秀人の両耳に手を添えた。

完全に聞こえなくなると彼女は微笑んで手を放した。

「暑かったでしょう、ゴメンね。

コーラあるよ、おいで」

男の子から笑いが消えた。だが生気を失っていた瞳に愛が宿った気がした。

「選んで聞いている? 」

少し悪戯な微笑みが滲みだしたものの、すぐに壊れた笑いで飾ってしまった。


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