# 薔薇に蛇(2)
更に興味を抱き凝視すれば、棘だらけのつるの中を蛇が隙間を気まぐれに縫うように這うのが確認できた。時にギュッと棘だらけの塔を締めあげ、赤い血をあちらこちらでぴゅーぴゅーと音を立て吹き上げる姿が浮かび上がった。
「ヒッ」
ヒミはメイド服の刺繍がドクっと脈を打ったのを感じた。
「ペアリングが完了したみたいだね。これからは気兼ねなく『ノベンバー・ソウル・ランド』を満喫できるよ」
「でも、ウチはホテルの部屋に装備されているみたいな高価な機器なんて持っていないし、回線も弱いんだよ」
「それが関係なくなるってことさ」
「どういうこと」
「魂の共有深度があがる」
「余計に分からん。どういうことよ」
「君の望みがこの世界と融和して、ヒミというアバター制限が解除された。ユーザーというより管理職になった感じ」
「余計に分からんし。大人の仲間になる感じで嫌だ」
「僕も同じ年だ。ハハ。
そもそも、ここは魂がすべての基準で、肉体に起因する下等な欲求は清浄化されるのさ」
「待った。ゆっくり教えてもらうよ。今はこの素敵な服の幸福におぼれさせてよ。フウと一緒にいたマリコさんがあまりに天才過ぎたから、メイド服を着たい気分だった」
「でも、ちょっと短いかな。ひょっとして」
マリコのスカートは長めであったが、ヒミのスカートはひざ上だった。KZは疑われている気がしたのか慌てて否定した。
「マリコだよ、それは。彼女が君に着させたかったんだ。凄く気に入られたってことさ」
そんな風にはちっとも思えなかった。そして、マリコを呼び捨てする彼によって、妃美香の胸の内では見ぬふりしていた感情が、ねっとりと余計なざわめきを絡み付けながらくびきを上げた。
「マリコさんとはどういう関係」
するとKZはすっと人差し指を唇に当てて笑った。
「マリコさんは私たちを監視しているの? 」
「見ているだろうね」
「え? 待って、それ以前にこのNSLにログインしている世界中の人も見えている? 」
「否、心配しないで。今いる領域は重層的に重なっている最上級次元だから、同じ町並みで歩いていてもライセンスごとで世界は変わる。しかし上層のアクシデントがより下層の環境に影響を及して時に残像が悪さをする状況もないとも言えない。
僕らはゴーストってところかな」
「ムズッ。なんかいろいろ仕掛けがあって怖いわ」
「心配しないで。それよりも、街を案内しながらいろいろ話したいんだ。
僕の興味について関心を持って聞いてくれる人間は誰もいないから・・・・」
はぐらかされた気がしたが、どこか、一人ぼっちのままの彼に安心していた。
「分かった」
「さっき、魂って言っただろ。そのことから話をしよう」




