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ぱんけーきイズでっど  作者: アラタオワリ
28/67

# チェキ会(2)

 どれほど時間が経ったか分からぬほどライブ映像に夢中になっていたKZは、マイクを叩く音にびっくりした。

「ふぁっ」

軽く悲鳴を呻いた。

「変な音鳴ったけど、いますか?

どーぞっ」

焦って少年は応答した。

「い、いますよ、どぅぉーぞ」

KZが妃美香のスマホレンズを瞳に換えたその瞬間、緊張と興奮で少し引きつりながら話す少女が映る。ふたりの会話が鮮明に聞こえた。

「パンケーキ、持ってきました」

「ごめん、無理を言って」

「推しの為に作るなんて至福の極みなんで、うぇへへへ」

少女は一気に喋り始めて顔はより紅潮していく。

「いろいろ状況がありまして二人分だけなんだけど最強のふわトロな舌触りの一品になりましたんでお食べください、はぁぅ、そしてですね今日の配合と仕上がりからこの後の経過条件的に最適な温め方のパターンをメモして」

「うっ、ありがとう。ちゃんと呼吸しましょ。

死ぬんでね」

「すいませんすいませんキショイっすよねですよね死にますねアアアっ」

「ポーズ決めて下さーい」

スタッフは仮死状態になった少女を少し睨みながら催促した。ツボって笑ってしまっていた妃美香は慌ててスタッフに謝った。

「待って。ごめん、私が悪いので怒らないで。

ごめんね。さあ、撮ろう。いいかい」

少女は残り僅かのHPでは、ぼんやり言われる方を見るだけで精一杯であった。その姿を見た妃美香はギュッと抱きしめる。

「ポーズはどうするか」

回復した少女は満点の自己表現を成せた。

「ハートがしたい! 」

「いいよ」

妃美香は肩を抱きよせてお互いの手でひとつのハートマークを作る。

妃美香が感じた少女の指の震えをKZも感じていた。

「ハイ、撮ります」

スタッフはシャッターを切ると慣れた手つきでインスタント・カメラを妃美香に差し向ける。出てきた写真を抜き取り軽く振りながら彼女は優しく笑って尋ねる。

「宛て名は麻衣ちゃんでいい? 」

少し間が開いたが、確かな口調で少女は答えた。

「・・・・菓乃でお願いします」

「え? 

大丈夫?

昨日はなんか、ウチが無理やり勘違いを押し付けてしまったかなって。申し訳なくなっちゃって凹んだのね」

「そんな必要ありません。私のせいです。あの後、少しずつ思い出したんです」

「え、なら。お願いが二つあるの」

「何でも聞きますよ」

「敬語やめよ。幼馴染なんだから」

「は、う、うん」

「もう一つはねオンラインゲームを一緒にやりたいんだよね。ゲームはする? 」

「定番のスマホのゲームくらい。オンラインゲームはやったことないです」

妃美香はチェキに写真が浮かび上がってきたのを確認して、サインを書き始めた。

「菓乃へと・・・・。

IDコードも書いておくからコンタクトしてきてね。絶対だよ。SNLで検索すると『ノベンバー・ソウル・ランド』の仮想世界のサイトが出るから、メンバー登録してね。でね、そのコードを入力するとウチとフレンド成立するから。そうしたら、ゲームもできるし、仮想世界ではあるけど、いつでも一緒に遊べる」

「うん。帰ったらすぐにでも頑張る。手続きとかいつも戸惑ってしまうから明日になったらごめんなさい」

「泣きそうだわ」

「どうしてですか? 」

「なんかこんな感じが記憶と繋がってあの時の空気感が甦ってくるわ。

ね? 」

菓乃は問いかけられたかと思ったが、少し頭を下げて胸元に呼びかけるかのように視線は床に向けられてでもいる感じ。

妃美香はその時、ドヤ顔をレンズに捉えられてKZを愉快にさせていた。

「アハハ、確認ってそういうことね。縁だね。

でも、偶然にしてはタイミングが良すぎて怖いな」

「だな。でも、面白いよね。

あ、ごめん。菓乃」

スタッフに剝がされた菓乃は手を振りながら離れていく。

「パンケーキありがとう。後、さっきの約束お願いだよ」

妃美香は手を振り終えると再び少しうつむき意地悪な口元で呟いた。

「KZ,いや、こうなったらフウちゃんとでも呼ぼうか? 」

「KZで」

風はきっぱり拒絶した。

「前の形態とは違うから」

「照れんなよ。言い方も厨ニ病拗らせとるのがプンプンじゃん」

サイバーに浸食されている意識体の現状を、仕事中の彼女に説明することも出来ないと考えてKZは黙った。

「はい、次の方どうぞ」

「うっス」

「え? 」

妃美香のイヤホンにKZではないフウちゃんの動揺が響いた。一瞬、妃美香もKZのノイズ音に動きが止まったがすぐに気持ちを切り替えていた。

「初めましてで、よろしかったですか。

お姉さん、めちゃかっこいいですね。パンクっぽいのに、洗練されたシルエット」

イヤホンからは電波が乱れたような雑音が鳴っていた。

「お姉さん?

うふふ。そうよ。

相変わらずいい瞳をしていて、チュウしたくなるわね」

「前も、一緒に写真を撮ったことありましたか」

「ねえわよ、うふふ、ひ・み・か・ちゃん」

「え?

あ? 」

「おひさ! 」

「フウ・・・・のお母さん? 」

「人気者になっちゃって。待ちすぎて腰がいてぇです」

「なんかキャラ変が激しすぎて、メモリーがバグってます。

あ? 菓乃ちゃんが連れて来てくれたんですか」

「本当にびっくりだわ。引き合ってるっていうのかね」

スタッフが撮りますと声をかけると急にポーズを決めて言い放つ。

「さあ、バシッと決めてよ」

アイドルのヒミはグイっと強引に抱き寄せられて、

「あっ」

小さく喘いだ。

零香は妃美香よりも強いカリスマ性を放って写真に納まってしまうのだった。

「いいプレゼントになるわ。フウちゃんのぱーかって書いて」

「ぱ、ですか? 丸ですか、点々のバではなくて? 」

「失礼ね。うちの子はバカじゃないから。フフフ」

妃美香はどこまでが冗談かわからず、ちょっとドキドキしている自分に気づいた。

「終わったら三人で内密の話をしましょ。外で待っているから、菓乃ちゃんにメールして。これ彼女のアドレス。

じゃあ後でね、ラブぴちゃん」

「は・・・・い? 」

どちらが、アイドルなのか分からない姿になっていたが、KZの声で少し我に返った。

「クッソ、黙って何をやってんのさ。朝早くコソコソ出かけたなあと思ったら」

「え? どうした? 」

そういうことするんだよなぁ、あの人は・・・・フン。

ねえ、ヒミに頼みがある」

思春期の男子らしい反抗的な青さが声に浮き上がっていた。


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