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ぱんけーきイズでっど  作者: アラタオワリ
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# KZ―2(2)

零香は風のマッシュヘアの髪をなでた。

寝癖が気になったので唾をつけて抑える。

「やめて。臭くなるよ」

「あら、何を言ってるの。私の唾を欲しがっている紳士なんていっぱいいるんだから」

オエッと吐くジェスチャーをして息子は顔をしかめた。

「変態」

「何言ってんの、あんただってその内、好きな人間の液をだね」

ちょっと意地悪して可愛すぎる息子をかまっただけのつもりであったが、急に黙ってしまうので訝しげに聞いた。

「何を黙ってんのさ。

うん?

ベロ入れたんか」

「い、入れるもんか。そ、そ、そんな話を今は・・・・」

零香はこれ以上深入りしてとんでもない話が出たら、暴れてしまう自分が想像できたのでぐっと飲み込んだ。

「そりゃそうだまあ、いい。続けろよ、ボクちゃん」

「なんだよ、口悪いな。もうイヤダイヤダ、話を戻すよ。

それでね、まだこっちのプログラムは僕がダイレクトに対処する性質上、酸化性崩壊に至らぬ緩やかな規則性を維持出来ている。

そうなんだけど・・・・」

「同じSLIDERのCODEが共鳴でもしているかのように、あなたの衰弱が進んでいる」

「僕が僕でなくなる領域にいよいよ踏み込んでしまっている感じ」

「死なせないわよ」

「魂の証明がなされるってことだから、それはそれで人類にとっては良き」

「やめな。まだ早いわ。今のところ、魂が定着できる受容体が出来ていないのよ。

まだ要素が、クソ足りないのに」

「やっぱり、あの原点の味がもう一度この世界を安定させる為には必要なのかな。なんとか間に合わせて、『ノベンバー・ソウル・ランド』で永遠を実現したい。

いつかはいろんな人が、僕の世界で超越した神さまとゼロになる夢・・・・」

「私は全部総取りするわ。

一つだって奪われないんだから。

勝手に独走は厳禁よ」

ギュッと頭を抱いて瞳を見た瞬間直感が心の中で刺さる。

― 「左目が生命の気配が皆無の奈落の底のような生臭い穴になっている」 ―

「お母さん、何? 

どうかした? 」

「否、何でもないわよ、クソ。今日はあまり動き回らないで安静にしているのよ。

私は帰るのが遅くなるから、約束よ」

「いいよ、別に。ずっと向こうの世界を構築してるから」

「何言ってんの、向こうに行くのもちゃんと自制して。さっき言ったじゃない、安定化しない世界であなたの次元ゼロ化現象が進んだらどうするの」

「救世主が、キャンペーンで現れるからさ、大丈夫。そんな気がするんだ・・・・。

後、マリコもきょう来日するし」

零香は中指を唇に当てそれ以上言うなと示した。

「ふん、勝手にしな。お母さんは、今回の来日で一番大事な実務的なコトを済ませなければならないから、頑張ってきますよ。心してイチャついとれ」

「実務的って何? 」

「朝方になるかもしれないから先にしっかりと眠っているのよ」

「誰さ? ついに源蔵さんと対決? 

それとも、イイコトかなんかするん? 」

「うえ。キモっ。今更、あんな奴の息を吸うのなんてごめんよ」

「でも、最近の暴走は少し度を越しているから解決にきたんだろ、直接」

「まあね。あの会社で起きている急激な方針変換がこちらと何か関連していたら厄介だから。でも、こちらから会いに行く必要なんて無いわ。向こうの方が辛抱しきれなくなってコンタクト取って来るんじゃないかしら」

「うん、最近のアプリ。あれ、なんか、手ごわすぎて。シーウエイブらしくない感じ」

「あー、【KIMOCHI】のアプリのことね」

「うん。ちょっと、あのコードが最近僕の世界にも漂ってきてね。レインボー・ゴーストが悪さするから」

「レインボー・ゴーストって何よ。え? 聞いてないわよ」

「マリコには言ったけどね。」

「何よ。ピンタしたいわ」

「浸透性が高い性質なのかセキュリティをすり抜けてウイルスカードを厭らしいところに置いて、オープンワールドの治安を少し邪魔するんだ。

しつこいから調べたら、案の定「SLIDER」CODEのDNAが引き継がれていた。

ごめんなさい。余計なこと言ったらお母さんは父さんの会社に乗り込んで行きそうだからさ」

「生意気。失礼ね、私は粗暴な娘じゃないワよ、フン。

こっちだっていろいろ忙しいのよ。

でも確かに、先に気付いていたなら、来日したその日に突撃していたわ」

「ほらっ」

「アハハ、そろそろ行くわ。

体調になんか異変が有ったら即、連絡するのよ。まあ、あなたは虫の息で存在しているざまだから数値はリアルタイムで見えるようにしてあるけどね」

「一言多いよ。分かったよ。心配しないでいいよ、僕は一人じゃないしね」

説明をせずにうまくかわす母親に息子は意地悪をしたくなった。

「あ、そう。憎たらしいったらありゃしない。

まあ・・・・マリコによろしくね」

最後は優しい声であった。

「ゆっくり、仕事を済ましてきていいよ」

「あーそうかい、マセガキちゃん。好きなだけメイド遊びでもしてもらいなさい」

息子の頬にサラッとキスして、クジャクの羽模様の刺繡が施された白地のシャツにダークなワインレッドのレースのアウターを羽織る。

「戦闘モード高っ! 」

言い放つ息子に、振り向くと投げキッスをして勢いよく出て行った。

零香は閉まったドアを背にして呟く。

「クソ、いろいろ・・・・同時に起きやがって。

レイちゃんだって、怖いのよね。あ、いけね。

今日、会うのは菓乃ちゃんだって言えなかったじゃない。あの子が悪いのよ、キモイことを言うから。

フフフ、まあいいか。ボクちゃんにはお預けよ」


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