市場に到着
市場に入ります。
「アディーのまわりは、…うん、なんというか…、興味深い人が多いね」
微妙な空気の中、デュラン王子が、言葉をしぼりだした。
ロイドを、どうとらえていいのか、とまどってるようね。
で、そのロイドはというと、デュラン王子は放置で、私にばかり気を配っている。
「アデル様、ほら、足元気をつけて」
と言いながら、小石をひろう。
「暑くなってきましたね」
と言いながら、さっと日傘をだして、私の上にさす。
いつもながら、どこに持ってたの? マジシャンですか?
ほら、デュラン王子が目を見開いてるよ。
「もう着きますからね。お疲れでしょうが、がんばってください」
馬車から市場まで、すごーく近いんだけど…。
という感じで、ロイドは私に絶え間なく、色々気づかってくる。
マルクも、他の護衛騎士たちも、見慣れているので、完全スルーだけど、デュラン王子の目は、もう、ロイドにくぎ付け。
さっきから、町の景色、全く見てないよね?
まあ、わかるけど…。
出会ったことのない生き物に遭遇したら、まわりに目がいかないもんね?
そんな微妙な空気の中、市場に到着。
町の人たちでにぎわっていて、ちょっとわくわくしてきた。
ロイドが、
「ここが、この町で、一番歴史が古い市場です。一年中、朝早くから夕方まで、休みなくあいてます」
と、説明した。
うわあ! あまーい、いいにおい!
「マルク! あそこのお店、おいしそうだよ!」
思わず、甘いもの好き仲間に声をかける。
ずーっと疲れた顔をしてたマルクが、やっと笑顔になった。
「ねえ、ロイド。あのお店、何を売ってるの?」
「揚げ菓子を売ってますよ」
「へえー、ちょっと食べてみる?」
そう、提案してくれたデュラン王子が、輝いて見える。
「やった! マルクも行ってみよう!」
と、走り出そうとしたが、ロイドにおさえられた。
「走ったら危ないです」
「大丈夫よ! すぐそこじゃない?」
「ダメです。転んだら大変です。私が買ってきますから」
と言って、すぐさま走っていき、お菓子を手にして、すごい勢いで戻ってきた。
ねじったお菓子が紙に一つずつくるまれている。
おいしそう!!!
ロイドは、それを、デュラン王子とマルクに一つずつ渡した。
私も手をだすと、ロイドは、なぜか、
「少々お待ちを」
と言って、お菓子の上の方をちぎった。
「ちょっと、ロイド! なにするの?」
が、ロイドは答えず、お菓子を口にほうりこんだ。
そして、口の中でしばらくかんで、やっと飲み込んだ。
「毒はありません。大丈夫です。どうぞ、アデル様」
…ああ、毒味ね。それ、今いる? お菓子が小さくなっちゃったよ。
マルクが気の毒そうな目で私を見ている。
デュラン王子は、お菓子のことも忘れて、またもやロイドにくぎ付け。
ロイドは、涼し気な顔で、私を見ている。
ほんと、なに、この状況?! こんな感じが、今日、ずっと続くの?
すでに、ぐったりなんですけど。
まあ、揚げたてのお菓子はおいしかったけどね。
マルクも甘いものが補給され、顔色が戻ったから良かったけどね。
デュラン王子は、お菓子の味は多分あんまりわかってないみたい。
すっかり、ロイドにのまれてるもんね。
そして、続けて、市場を見て回ることに。
デュラン王子が目立つので、やはり歩いていると、あちこちから、きゃっ!みたいな声が聞こえる。
そんな声を聞いて、やっと、デュラン王子も正気を取り戻してきたみたい。
いつものように、まわりにむかって、甘い笑顔をふりまきはじめた。
この市場は奥に長い。両脇にずらりとお店が並んでいて、エリアによって、お店の種類が決まってるみたい。今は、お花や植物のお店が並ぶエリアに入った。
「ねえ、アディー、好きなお花は何?」
デュラン王子が聞いてきた。
「うーん、王道だけど、バラかな」
「何色が好き?」
「ピンク!」
「アディーに似合うね」
と、デュラン王子がほほえんだ。まさにバラが背後にとぶようなほほえみだ。
そして、
「ちょっと、寄っていい?」
と私に聞き、ひときわ、おしゃれな雰囲気の花屋さんに入っていった。
マルクはお花に興味がないよう。
甘いものエリアで、いつの間にか調達していたお菓子を袋からだして食べている。
ほんと、よく食べるね…。
ロイドは、私の背後にはりついて、まわりを警戒している。
二人ともマイペースだ。
店先に並べられたお花は色とりどりで、うん、疲れた心を癒してくれるわ!
そうこうするうちに、デュラン王子が戻ってきた。
うわあ、びっくりした! 大きな花束をかかえている。
「これ、アディーに。初めてのデートの記念に」
いやいや、デートではないですが…。
って、すごい量のバラの花束なんですが! しかもピンク!
わたされた花束に自分がうもれそうになった。
いい香り! お花をもらったら、やっぱりうれしいね。
なんとか、花束から顔をだして、
「あの、ありがとう、…デューさん」
とお礼を言った。
「どういたしまして。店じゅうのピンクのバラ、買い占めてきちゃった」
そう言って、デュラン王子が、それはそれはとろけるような笑顔をみせた。
なんか、照れる…。
じゃない! 一気に心をもってかれそうになってしまってたわ!
さすが魔王、おそるべし!
書いていて、マルクを忘れそうになります…。そして、ロイドの案内?は続きますが、どうぞよろしくお願いします。




