ダンスは終わったけど
ダンスが、なかなか終わらない…。思いのほか、長くなってしまいました。
こんな拷問のようなダンスって、ある?!
途中、デュラン王子がきたけれど、ユーリがかわるのを断固拒否。
私の手をにぎってはなさない。子どもですか?!
ふりほどこうとしても、すごい力でつかまえられている。
うん、獲物の気持ちがわかるわ…。
しかも、いつもは、冷気で私をふるえあがらせているくせに、手を強くにぎって、暑すぎるんですが。
ユーリも体温のある人間だったのね、…なーんて考えてる場合じゃない。
言いたくないけれど、私の手汗がすごいことになってるから。
うん、乙女心が死ぬ。とりあえず、手をはなして!
結局、ユーリとだけ踊り続けるはめに…。
ルイ兄様が、ダンスの途中、すれ違うたび、ブフッとふきだす声が聞こえてくる。
(笑ってないで、助けなさいよー!)
目でうったえるが、涙をうかべて、笑っているだけ。
ほんと、頼りにならないよ。
こうなったら、そう、親友のマルク!
さっきは逃げたけれど、もう一度、チャンスをあげる。
信じてるわ。親友だもの。
ほら、合図を送れば…って、何食べてるの?!
また、マカロン?! のんきだな。はあ、こっちもダメだわ…。
あっ、そこでダンスを見ているのは、公爵夫人である、レイラおばさま!
ユーリの母上だもの、とめられるんじゃない?
(息子さん、奇妙な状態になってますよ? 助けてください!)
近づいた時に、必死で目で訴えると、なぜだか、手をふってきた。
「ユーリ、がんばれ!! アデルちゃんをめぐっての、男たちの戦いね! 楽しいわ~」
…そうね、助けを求める人を間違えたわ。
しかたない、次はだれに助けを求めるか、きょろきょろしていると、ぐいっと腰をひかれた。
目の前に、美しすぎるお顔が!
「ちょっと! ユーリ、もっと離れてよ」
「ねえ、さっきから、どこ見てるの。おこるよ、アデル」
と、魔王の声が耳にふきこまれる。
だ・か・ら! ほんと、息をふくのやめてってば!
ぞくぞくするじゃない。
そんな私を見て、魔王は、極上の笑顔をみせた。
そして、やっと、ラストの曲がおわった。
私は、いろいろ削り取られ、もう、消えてしまいそうだ。
ユーリはといえば、なんだか、さらに輝きが増し、上機嫌に見える。
さては、私のエネルギーをすいとったな!
魔王かと思ったら、吸血鬼だったのね。うん、似合いすぎるわ…。
さあ、これでお開きね。私は疲れ果ててます。もう、帰らせて!
が、ここで、ブルージュ国を代表して御挨拶が。
もちろん、話をするのは、交渉団の団長、デュラン王子だ。
「みなさまがた、本日は、すばらしいパーティーを開いていただき、ありがとうございます」
甘いほほえみをふりまきながら、話し始めると、もう女性たちはメロメロだ。
気をつけて。中身は魔王だから…。
「これからは、さらに両国が助け合っていけるように、国同士の交流も活発になっていくことを期待しております。まずは、その先陣をきって、アデル王女が我が国を訪問していただけることとなりました」
え、さっき、決まったばっかりだよね。もう言うの? なんか嫌な予感がするんですが?!
「あまりに嬉しくて、明日、帰国する予定でしたが、私だけ、もう少し滞在させていただくことにいたしました」
え? なんで?! いや、いや、帰ろうよ!
「そして、帰国する際に、アデル王女とご一緒できるよう、王太子殿下にご了承していただきました」
はああ? ルイ兄様?! なに、勝手に了承してるの?
ここで、にこにこしながら、ルイ兄様が登場。
「デュラン王子がご一緒してくれたら、道中も安心ですからね。早急に、アデルの訪問の準備を整えたいと思います」
魔王にすっかりまるめこまれてる。
そして、お隣さんのご機嫌は急降下。
あんなに暑かったのに、冷気がただよいはじめた。
ユーリさん、寒いよ…。汗が一気にひいていくから、風邪ひくじゃない…。
「この国のことをもっと知りたいと思いますので、みなさん、滞在中、色々教えてくださいね」
デュラン王子の言葉に、いっせいにうなずく女性陣。
さすが、魔王。すでに国民のハートをつかんでる。油断できないわ。
もしや、この国をのっとるつもりかしら?
ルイ兄様なら、即刻、従えられそう。頑固な父が、いまだ王でよかったわ…。
ん? まって? じゃあ、ブルージュ国への道中、この二人の魔王と一緒ってことよね。
私だけ別便で、行かせてもらえませんか?
ほんと、リッカ先生に会うまでの道のりが遠すぎるよ…。
結局、デュラン王子、帰りません。ということで、今後も登場します。お気軽に楽しんでいただけるお話をめざしてます。どうぞ、よろしくお願いいたします。




