ダンスの時間
ユーリの本領発揮です。
ここで、音楽がながれはじめた。
ダンスの時間だ!
ダンスは苦手だけど、なんだか、今日ばかりはうれしい!
とりあえず、この不毛な会話からはのがれられる。
ルイ兄様は、他国の姫君と婚約しているので、ファーストダンスは私とおどる。
じゃあ、早く、この場から逃げましょう…、じゃなくて、踊りに行きましょう!
といっても、2曲目は、ユーリと踊るんだけどね…。
でも、つかの間、心の休息ができるわ。
ささっとフロアのほうへ、ルイ兄様をひっぱっていこうとすると、
「アデル、今日はこっちだよ」
と、ユーリに手をとられた。
え、なんで?
ルイ兄様を見ると、
「今日は、ブルージュ国交渉団の女性団員さんと踊るから、ユーリと踊っておいで」
そう言って、ひらひらっと手をふった。
うん、のんきだな。
この状況で、ユーリとか…。普通に怖いよね。
そして、デュラン王子も、
「あとで、ぼくも踊ってくださいね」
と、とろけそうに微笑んだ。
が、どれだけ甘くても、もう、やっかいな笑顔にしか見えない。
あいまいに微笑み返すと、ユーリがすごい勢いでにらんできた。
ほんと、面倒…。
ホールにつき、踊りだす。
さすが、ユーリ。麗しい天使の笑みをうかべ、リードも完璧。
ダンスも、うまいんだよね。
私のダンスは並み程度だが、ユーリのリードで、相当ごまかしてもらっている。
優雅なダンスに、まわりからため息が聞こえる。
すれちがう女性たちが、ユーリを見て、きゃっとか言っている。
あの、みなさん。踊っている時は、自分のパートナーを見ましょうね。
失礼ですよ…。
まあ、確かに、きらきらしてるから、目を奪われるのもしかたないか…。
なーんて、ぼーっと踊っていたら、女性たちの悲鳴があがった。
ちょっと、ユーリさん!!
いきなり、ユーリが、私の顔に触れるくらい顔を近づけたのだ。
しかも、一度ならず、ポジションが近づくたび、触れるほど、顔をひっつけてくる。
こんな接近するような踊り方をしたことがないのに、どうしたの!
平衡感覚がおかしくなったのかしら? 正気をたもってる?
私はたまらず、小声で注意した。
「ユーリ! ちかいっ、ちかいっ、ちかいよっ!!!」
が、あせっている私を、ユーリはおもしろそうに見下ろすと、
「ぜーんぶ、アデルが悪いんだよ」
そう言って、艶やかに笑った。
まわりからは、さらに、悲鳴が。
ユーリファンのみなさまがたが、今にも倒れそう。
…って、ん? あ、いけない! 作戦をすっかり忘れてた!
ユーリの婚約者候補を、あの中から、探そうと思ってたのに。
ダメじゃない、こんな姿を見せたら。
ユーリファンにとったら、もう私ってば、完全に敵だよね?
ほら、見て。呪われそうなくらい、にらまれてるんですけど。
さすがに、これじゃあ、近づけないよね…。
作戦、実行する前に失敗か。また、別の作戦を考えなきゃ…。
「ねえ、アデル」
ひゃっ!と、思わず声をあげた。
なに、今の?! もしや、耳に息をふきかけたの?!
「ぼくとのダンスの最中に、なに考えてんの? 余裕だね。ねえ、アデル」
やめてー! 耳のそばで話さないで! ぞわぞわするー!
顔が燃えそうなくらい、熱くなってきた。
「もー、ユーリ! やめてよね」
これ、絶対、顔が真っ赤になってるよね! 嫌がらせ?
すると、そんな私をみて、ユーリがククッと笑った。
「かわいい。アデル」
なに、これ? 新種の魔性の生きもの? 怖いんですが?
「でも、変なやつ、ひきよせたらダメだよ」
ん、あなたのことですか?!
それからも、何度も、顔を近づけてくる。
こんな疲れるダンス、踊ったことがないんだけど!
心身が削られたところで、やっと、曲がおわった!
やったー! がんばった、私!
さあ、華麗にお辞儀をして、ありがとうございました。退散!!
と、思ったら、ユーリに手をつかまれた。
「どこ行くの? まだ、終わってないよ」
「え、でも、次は、ルイ兄様と踊るから…」
「だめだよ。今日は最後までぼくと踊るんだよ」
「はあ? いつも、1曲しか踊らないでしょ。他の人とも踊らないと」
「いつもはね。でも、今日はダメ。ずーっと踊るの」
と、よくわからない会話をしている間に、新しい曲がはじまった。
そのまま、無理無理、踊らされ始める。
ユーリファンのざわめきが聞こえる。
わかるわ! 私もざわめきたい! どうなってるの?!
とにかく、だれか、音楽をとめて…。
色々不満がたまっていたユーリのうっぷんをはらす?回となりました。ちょっと、暴走気味のユーリがどうなんだろう?、と不安を抱きながらの投稿です。ブックマークしてくださった方、いいねをしてくださったかた、評価をしてくださったかた、本当にありがとうございます!




