訂正できない
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「ふーん…、相手がマルクじゃなかったら、消してるレベルだね?」
は? 消す?! なに、恐ろしいことを言ってるの、ユーリ?!
「ああ、そういえば、シンガロ国に、婚約解消になった公爵家の一人娘がいてね。王家とも親戚の重要な公爵家だから、婿入りできる優秀な貴族を探してるんだって。ミカル王太子から直々に、マルクを打診されたけど、マルクじゃ荷が重そうな令嬢だから断ったんだ。でも、気がかわった。マルクがいいかもね」
シンガロ国には私の姉、カレナ姉様が、ミカル王太子様に嫁いでいる。
その関係で関わりも深い国。
けれど、なぜ、いきなり?!
馬車の中で、しかも私を抱えた状態のユーリが、マルクの婿入りを本人不在で決めようとしているの?!
しかもマルクじゃ荷が重い令嬢って、どんな令嬢?!
私は、親友マルクの将来のため、恐る恐る聞いてみた。
「今、急に、マルクの婿入りの話題がでてくるのは、どうしてかしら…?」
すると、ユーリは背後から私の肩にあごをのせ、私の耳元でクククっと笑った。
「だって、アデルと仲良すぎて邪魔だから? シンガロ国なら、結構遠いし」
「はああ?! ちょっと、そんな理由で?! 大事な弟でしょう?!」
「うーん、どうだろ? まあ、でも弟じゃなかったら、アデルに近づいた時点で、とっくにつぶしてるけどね」
「あのね、人は、つぶすものじゃないの、ユーリ。それに、マルクの婚約はマルクの意思を尊重しないとダメよ!」
「じゃあ、マルク自身がそうしたいと言えばいいってこと? なら簡単。ぼくが説得したら、すぐにうなずくよ」
「確かに、そうだろうけれど…。でも、それは説得じゃなく、脅迫じゃなくって?!」
思わず、声をあげる私に、ユーリは、全く悪びれずに答えた。
「それって、一緒だよね?」
でたわ、魔王発言。この価値観、正訂していくのは難しいわね…。
ということで、ごめんなさい、マルク…。とりあえず、逃げて!
と思った時、ガタンと馬車が大きく揺れた。そして、その後も揺れる、揺れる。
ラスさん、スピードをあげるって言ってはいたけれど、これ、なんだか、尋常じゃないスピードよね?!
いくらなんでも危なくないかしら?!
ユーリの上に座っている状態の私は、放り出されないように、体に力を入れた。
すると、ユーリが私の胴にまわした腕に更に力をいれて、ちょっと苦しいくらいに、がっしりとだき抱えてきた。
冷たい魔力を放つ魔王ユーリだけれど、体温はあたたかいのね…。
しかも、爽やかな香りまでする。
なーんて考えてしまうほどの密着度…! ほんと、やめて?!
私の顔はどんどん熱くなり、心臓が猛スピードでうちはじめた。
人間として、危険を知らせるアラームが頭の中にガンガンとなりひびいている。
ぼーっとして、思考もとぎれとぎれになってきた。
「…アデル。アデル。大丈夫?」
はっ、ユーリが呼びかけていたみたい。
「…な、な、な、なななにかしら?!」
「な、が異常に多いね。落ち着いて?」
ユーリが耳元でささやいた。
「は、は、は、離れなさい、ユーリ!」
思わず、叫ぶ私。
「ふふっ。…こんどは、はが多いよね。ねえ、どうしたの?」
そう言って、後ろから私の顔をのぞきこんできたユーリ。
「あ、アデル、顔が真っ赤だね?」
そう言って嬉しそうに微笑む美貌の魔王は、凶悪なほどの色気をまき散らしている。
これは、見てはいけないものよね?
急いで目をそらすと、私の胴にまきついているユーリの腕に目がとまった。
シャツの袖口に、透明のボタンみたいなものが、うっすらと点滅している。
「あっ、もしや、これ! さっき言っていた通信機?!」
思わず興奮して聞くと、ユーリがちょっと拗ねたような顔をした。
「あーあ、せっかくいい雰囲気だったのに、一気にぶちこわすんだから。でも、そんなキラキラした目で見られたら、仕方ないか…。まあ、お楽しみは後にとっとこ。ね、アデル」
そう言って、妖しい笑みを浮かべた。
瞬間、私の体がぞわっと粟立った。
ユーリにとってのお楽しみは、私にとっては楽しくないような気がするわ…。
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