本来の姿
ドラゴン場面、続きます。
ランディ王子の言葉に、気がゆるんだのもつかの間、ズダンっと地面がゆれた。
ドラゴンが立ちあがったからだ。
そして、ドラゴンは雄叫びをあげると、赤い目をぎらつかせて、ユーリを見下ろした。
さすが、ドラゴン! ド迫力よね…。
「水の悪魔よ、よく聞け。わたしと虹の子は、切っても切れない絆がある」
え、絆って…? ドラゴンと私が?!
思いもかけないドラゴンの言葉に、思わず、身をのりだした。
「何言ってんの? ボケてるの? アデルは俺のだ!」
ユーリが冷たい声でそう言って、私を後ろからぎゅーっとだきしめた。
すると、ドラゴンは翼をひろげた。
「しっかり見よ! わたしの本当の姿を!」
そう言うと、ゆっくりと、翼を上下に動かした。
すると、翼の色がゆっくりと変わっていく。
「え…? ええええ?!」
私は思わず叫んだ。
「うそでしょ?!」
「うわああ!」
ブリジットさんと、アンドレさんも叫んでいた。
最初に小さい山と見間違えたように、全身、茶色くて土のような色をしているドラゴン。
だが、今は、その翼が、きらきらとした虹色に変わりはじめた。
更にドラゴンは翼を上下に動かし続ける。すると、どんどん、翼の虹色が今度は体中にひろがっていく。
「まさか、このドラゴン、虹竜だったの?!」
茫然とした様子でつぶやいた、ブリジットさん。
「にじりゅう?」
私が聞き返すと、隣にいるアンドレさんが、興奮した様子で答えてくれた。
「虹色のドラゴンで、ドラゴンの中のドラゴン! 伝説のドラゴンなんです! まさか、本物に出会えるなんて、信じられないっ!!」
そう言うと、号泣し始めた。
「おとぎ話かと思ってたけど、本当にいるんだね。虹竜って…」
デュラン王子が驚いた様子で言う。
私からしたら、ドラゴンだけでも、おとぎ話の世界なのに、虹色のドラゴンになると、ファンタジーすぎて、もはや夢のようなんだけど…。
「これは、すごいことになりましたね! 国の宝としてどう活用していくか…。潤うな」
と、ジリムさん。こらえきれない笑みがこぼれている。
が、ここで、アンドレさんが、ジリムさんにつめよった。
「虹竜は神の化身です! 金儲けなど言語道断! 天をも恐れぬ行為です!」
穏やかそうなアンドレさんが、人が変わったように声を荒げている。
ドラゴンを大事に思う気持ちが伝わってくるわね…。
そして、ジリムさん…。
笑みはひっこめたものの、いまだ欲で目がぎらついてます。そちらも、ひっこめて!
ブリジットさんが、号泣しているアンドレさんに近づき、ハンカチを渡す。
「落ち着いて、アンドレ。すみません、アンドレは、人一倍、ドラゴンへの愛が深いから…。特に、虹竜は、私たちドラゴンに関わる者にとって憧れの存在ですから…」
「確かに、そうだよね。ジリムが、ごめんね。大丈夫、幻の虹竜は大事に保護させてもらうよ」
と、デュラン王子が優しくアンドレさんに話しかける。
アンドレさんが泣き止み、安心したように息をはいた。
「おい、ジリム。謝れ」
デュラン王子に腕をつつかれて、
「…すみません、アンドレさん。軽率でした」
不承不承、謝るジリムさん。
が、その後、小さく「もったいない…」と、口が動いたのを私は見た。
ジリムさん、ダメよ!
こんな小競り合いの合間にも、ドラゴンの全身は、まぶしいほどの虹色に変化していた。
そして、最後に、赤い目が金色に変わった。
そして、上を向いて息を吐くように、少しだけ火を吐いた。
一気に、暖かい風がまきおこり、私たちを包みこむ。
「これが、本来のわたしの姿だ。翼が傷つき、弱っていたから色が変化してしまっていたのだ。花の癒しの力だけでなく、虹の子の気が加わったおかげで、ようやく元にもどれた。
私を助けてくれた、そこの人間と、虹の子よ。礼を言うぞ」
と、ドラゴンが地響きのような声をとどろかせた。
不定期な更新ですみません。読みづらいところも多いと思いますが、読んでくださった方、ありがとうございます!
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