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癌で余命宣告された私が時を遡って、美少女を助けたり、仲間と一緒に怪獣と戦ったりするお話 ~ RETROACTIVE 1990  作者: TA-MA41式
1991年に至った私が、パソコンオタク、柔道四段の研修医、傍若無人なチビッ子女子高生とチームを組んで戦うお話
55/82

1991年2月26日 火曜日 20:00~

 ユージの凄さは良く分かった。

 この部屋一杯を使って、2026年並みの性能を持ったパソコンを作ったとか、

 OSも既存のプログラムを改良してオリジナルを作ったとか、

 HDが10TBで、RAMが64GBあって、1990年代じゃモンスターマシンだとか、

 小規模工場並みの電気工事がしてあるとか、

 冬でも時々冷房入れないと暴走するとか、


 「いやぁ、凄いねぇ。(棒読み)」


 「頑張ったねぇ。(棒読み)」


 気がつけば、自作のシステム自慢を1時間近く聞かされている。

 途中、何度か止めに入って、話題を反らそうとしたのだが、直ぐに元に戻ってしまう。

 今後、ユージが酔った時の話題には気をつけるとしよう。

 コンピュータ関連の話は禁句とすることにする。

 では、今、目の前にある問題はどうやって解決すべきか?

 一番良いのは、適当に理由を付けてお暇することだが、どうやって?

 この場合、相手の意表をついての脱出以外にあるまい。

 と、いうことで、


 「ああっ! 」


 「え? 何? 」


 「急用思い出した! すっかり忘れてた! 大変だ! 帰んなきゃ! 」


 「はぁ? 」


 「そういえば、今朝から母のイトコの嫁の叔父さんが危篤だったんだわ! 」


 「なんだそりゃ? 」


 「また今度、ゆっくり遊びに来るわ! 2027年ごろに! んじゃ! 」


 切羽詰まった顔をして立ち上がり、大きく頷いてから、荷物を引っ掴んで部屋から飛び出そうとしたのだが・・・摑まった。

 真横からタックルされて、ソファに押し戻されてしまった。

 ベタベタなわざとらしさだが、適当な理由を捲し立てて、酔っ払いが呆気に取られているうち、速やかに勢いで脱出を図ろうとしたのだが失敗した。

 この酔っ払い、意外に敏捷だった。


 「あからさまな嘘言ってんじゃねぇよ。何言ってんだかさっぱり分かんねぇよ! 」


 ソファの上で全体重を乗せた袈裟固めの体勢に入られてしまった。


 「は、放せって! 分かったから放せ! 」


 「逃げようとしたって、そうはいかないぞ! この後は俺が開発したオリジナルグラフィックボードの話を聞いてもらわなきゃなんないからな。」


 「ま、マジすか? 」


 ユージの自慢話が、まだまだ続くというのか?

 これはマズい!

 このままでは心が壊れてしまう!


 「それは絶対に勘弁! お願いだからやめて! 」


 精神の危機を脱するため、ユージの袈裟固めを振りほどこうと必死にもがいた。

 もがいていたら、


 「あらっ! なんか、なんか、なんか! ちょっとぉ、入ってきちゃダメだったんじゃないの? 」


 突然、甲高いオバチャンの声がした。


 「だから、ユージが出てくるまで待とうって言ったのによ。さっさと鍵あけちまうんだもんなぁ。」


 続いて、低音ハスキーな男の声も聴こえた。


 「何言ってんの! 外は10度切ってんのよ! こんなボロ屋の廊下に突っ立ってたら、私みたいなか弱いJKは凍えて死んじゃうわよ。あんたみたいに身体に断熱材が入った男とは違うんだから! 」


 JK? 今、オバチャン声がJKとか言ったか?

 JKというイニシャル単語、2027年では女子高生だが、1990年代では未だ使用されていなかったはず。

 1990年にもJKというイニシャル単語あっただろうか?

 オバチャンが自称するからには女子高校生ではあるまい。

 それ以外の意味付けがされているはずだが、これはちょっと私の記憶には無い?


 「まあ、入っちまったものはしょうがないんで、お取込み中すみませんが、そういうのは一旦後回しにしてもらえるかな? 」


 「ああ、これね、抑えてないと逃げちゃうから。」


 低音ハスキーボイスとユージが会話している。

 来客のようだが、親し気に話しているので知り合いと思われる。

 そう言えば、ユージがスマホモドキで誰かにメッセージを一斉送信したとか言っていたが、今、室内にいるのは、その相手なのか?

 抑え込みの体勢が続いているので首が回らなくて、声の主たちの姿が見えない。


 「ユージ、あんたが男を押し倒す趣味の人間だったとは初めて知ったわ。あっちじゃ、親子ほど歳の離れた若い娘専門のスケベジジイだったように記憶してんだけど、そっちもいけるんだねぇ。」


 なんか、オバチャンが鳥肌立つようなことを言っている。

 ついでに、気になることも言っている。

 “あっち” って、未来のことか?

 もしかして、このオバチャン、時間遡行者なのか?


 「いやぁ、やれっつったらできないことも無いと思うんだけどね。」


 酔っ払いがオバチャンの話に乗っかろうとしている。

 時間遡行者の話は後回しだ。

 もう、これ以上我慢してたら、おかしな誤解を生んでしまう。


 「変なこと言うな! これはちがくて! 長々とコンピュータの話し始めた酔っ払いから逃げ出そうとしただけだから! この酔っ払いが力づくで引き留めようとしてるだけだからって、もういい加減になぁ、はーなーせーよー! 」


 「逃げないってんなら放してやるよ。」


 「逃げないから、放せ! 」


 「よし! 」


 「何が “よし” だよ、俺が60代だったら首の骨折って死んでたぞ! 」


 「はっはっは! 若いって良いよな! 」


 拘束が外れてソファに座り直した私は、悪びれずに高笑いする酔っ払いに「チッ」と舌打ちしながら、クシャクシャになった髪の毛を手櫛で直し、ズレまくっていた上着とシャツを整えてから、声の主たちと向かい合った。

 のだが?


 (あれ? オバチャンいないな? )


 目の前には、三段重ねにしたLサイズピザの箱を抱えたガタイの良い大男が一人。

 身長185センチの私よりも上背があり、横幅もある。

 この男が低音ハスキーだろう。

 で、もう一人は見た目で分かる身長150センチ未満、145センチ未満かもしれないが、ポニテの女子小学生?

 いや、制服を着ているので女子中学生かも?

 などと、考えていたら、いきなり鋭い目つきでギロリと睨まれた。


 (なんか怖いぞ、このお子さまは。)


 とりあえず、オバチャンの行方は置いといて、ユージの紹介を待った。


 「さて、今日は顔合わせの日だから! 皆、仲良く楽しくやろう! 」


 それから間もなくして、テーブルの上には、ベーコン、アンチョビ、それと納豆、3種のLサイズピザと、スナック菓子やお摘み類が所狭しと並べられ、新たなビール缶、焼酎ボトル、オレンジジュースやコーラのペットボトルも載っていた。

 そして、応接セットの1人掛けにはユージとお子さま。

 3人掛けには大男と私が掛けている。

 九段下マンションの204号室、機械にぐるりと囲まれた異様な部屋の真ん中で向かい合う4人だが、


 (これは、いったい何の集まりなんだ? )


 状況が飲み込めずに首を傾げていたら、それに気付いたユージが思い出したように二人の紹介を始めた。


 「この大きい方は、藤樫とがし 健太けんた君。有名国立大学病院のお医者さん。でも、こっちじゃ漸く初期研修終わったばかりの卵。柔道4段の強者で、御年28歳だっけ? 」


 「27歳だよ。よろしくな! 」


 ガタイの割には小さめの頭がペコリと下がった。

 坊主頭に太い眉毛、顔つきが厳ついので、最初は取っつき辛いタイプかと思ったが、笑うと目が細くなり人懐こい顔になる。


 「で、次に、この小っさいのは・・・ 」


 「はぁ? 初対面の相手に紹介すんのに小っさいとか言ってんじゃないわよ! ちゃんと名前があんのよ! あんた、ちょっと言ってごらんなさい! なーまーえー!」


 オバチャンがいた!


 外見は女子小学生、又は女子中学生だが、明らかに中身は良い歳をしたオバチャンがいた。

 一人掛けの上に立ち上がって、肘掛けに片足乗せて、パンツ見せながらユージの胸倉を掴んでるオバチャンがいた。

 これで分かった。

 おそらく紹介の後に続くであろう種明かしを聞くまでもなくハッキリと状況を理解した。

 この二人も時間遡行者である。


 「ごめん! ちゃんと言うから放して! 」


 オバチャンに胸倉を捕まれて、けっこう本気でビビっているっぽいユージだった。


 「こちらの女性のお名前は、藤村ふじむら 小百合さゆりさんです。」


 藤村 小百合? 聞き覚えのある名前だった。

 確か2027年では、そんな名前の?


 「あっちじゃ、防衛大臣なんだよね。」


 そう! それだった。

 かなりのヤリ手代議士で次期首相候補とか言われていたはず。


 「へ、へぇー、そうなんだ! すごい超有名人でしょ。」


 但し、柄が悪くて、口が悪くて、一国の大臣としては品性に欠けるという評価もあったような気が?


 「はっはっは! そういうことさね。未来の防衛大臣、藤村 小百合! 只今、花の高校2年生だよ! 」


 感心して思わず声が出た私に向かって、良い気分で残りの個人情報を言い切った未来の防衛大臣だったが、何か、納得できない情報が混じっていた。


 「え、高校2年って? 」


 思わず違和感を感じた部分を口に出してしまったが、出さなければ良かった。


 「はぁい? 」


 又もや、先ほどの鋭い目つきに襲われた。


 「花の高校2年、御年17歳なんだよ。春からは高校3年生だよ。JKなんだよ、じぇーけぇー! なんか文句あんのかい? ええ? 」


 マジで驚いた。

 防衛大臣とかよりも、このパンツ見せて凄んでるチビッ子が17歳ということの方が驚愕の事実である。


 (小学6年生のアキラのほうが全然大人に見えるんですけど! )

第2章の主力メンバーが揃いましたので

いよいよ化物退治のお話に向かいます!

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