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癌で余命宣告された私が時を遡って、美少女を助けたり、仲間と一緒に怪獣と戦ったりするお話 ~ RETROACTIVE 1990  作者: TA-MA41式
1991年に至った私が、パソコンオタク、柔道四段の研修医、傍若無人なチビッ子女子高生とチームを組んで戦うお話
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斉藤京子さんの受難 1991年3月23日 土曜日 02:20

 プロ野球球団のユニフォームを着た二人組の人殺し? 殺人鬼? Murder?


 声が出るならば、今直ぐに悲鳴を上げたかったのだが、残念ながら今度も口をパクパクすることしかできなかった。

 顔面は蒼白、全身はブルブル、失禁しなかったのが不思議なくらいの恐怖である。


 「おい! 」


 白い変態? を、蹴り飛ばした鯨男は、バットを肩に担いだまま京子の前にしゃがみ(所謂ウンコ座りという感じで)、ドスの利いた声で話しかけてきた。


 「お前は、斉藤京子、23歳、独身、1967年8月3日生まれ、出身は埼玉県上尾市、現在は東京都府中市在住、〇〇大卒、株式会社□□総務部勤務、趣味は読書と音楽鑑賞、スポーツはスキーとダンス、これまでに付き合った男の数3人、現在は彼氏いない歴1か月と16日目だな? 」


 この男、ポケットからコピー用紙を1枚取り出して、そこに書かれているらしい京子の個人情報をサラサラと読み上げた。


 (え? なんで? なんでこの人、私の個人情報知ってんの? 付き合った男の数とか、彼氏いない歴とか駄々漏れなの? 怖い、怖い、この人怖い! )


 京子が恐怖に打ち震えるばかりで返事をせずにいると、男はさらに続けた。


 「先月、付き合っていた彼氏の二股現場を目撃して破局。付き合って5年目にもなるので、いずれ結婚するものだと勝手に勘違いしていたので失恋の痛手は大きく、その傷を1日でも早く癒し、別れた男を見返すことができる高学歴・高収入・高身長の男と出会うために、1991年3月22日、金曜の夜、西麻布の高級会員制ディスコで行われたお見合い目的のパーティーに参加した。しかし、残念ながら思うような成果が出せず、高望みし過ぎたため結局は一人あぶれてしまい、今は失意を抱いて帰宅する途中だな? 」


 (なんで知ってんのよ! 大きなお世話よ! ってか、怖すぎ! この人怖すぎ!)


 怖いけど殴りたい!

 この男が肩に担いでいる金属バットを取り上げて、滅多打ちにしてやりたい!

 腰が抜けて動けずにいるのが、とっても悔しい。


 (お願い! 誰か代わりに、この男を殴って! これ以上、私の個人情報を暴露させないで! )


 そんな京子の願いは、次の瞬間に叶えられた。


 「こんのぉ、大馬鹿ーっ! 」


 第三の人物が登場した。

 大声で叫びながら登場するなり、閉じたビニール傘を逆さに持って、持ち手の固い部分で思い切り鯨男の後頭部を殴りつけた。


 バキッーン!


 本気で殴った音、かなり痛そうな音がした。

 殴った後、傘の取っ手が90度くらい傾いていたが、それを物ともせずに第三の人物は鯨男と京子の間に割って入り、仁王立ちになった。


 「あんたねぇ、娘さんが怯えてんじゃないの! 良い歳して! もっと優しくできないのかい! 」


 「いや、俺は、この女が斉藤京子本人かどうか確認しようと思っただけで。」


 殴られた後頭部を両手で押さえながら、鯨男は言い訳したのだが、


 「そんなの名前だけ聞けば十分じゃないか! なに個人情報読み上げてんのさ! セクハラだよ! セクハラっ! 男と別れたのくっ付いたのなんか言わなくって良いんだよ! まったく、この男はデリカシーってもんが無いねぇ! 図体ばっか大っきくなっても、お頭の中は空っぽかい? あんた医者なんだろ? 普段から患者相手にカルテとか健康診断書の朗読してんじゃあるまいね? おーっ嫌だ! あたしゃ、あんたに診察されんのだけは死んでもゴメンだね! 」


 第三の人物による “ハイスピードトーク” に捻じ伏せられた。


 (ああ、なんか、この人は良い人っぽいわ! この人は、私を助けに来てくれた人なのね。)


 正に地獄で天使を見たという感じ。


 (でも、この鯨男って医者なの? マジで? ちょっと評価上昇した? かも。)


 だが、変な格好して、殴られた頭を押さえてしゃがんでいる姿からは想像できない。

 天使は、そんな鯨男にプイッと背を向けると京子の前にしゃがみ、優しい言葉を掛ける。


 「大丈夫かい? あらあら、こんなに濡れちゃって、カワイイ顔が台無しだよ。 ちょっと、ミノル! あんたのバックに乾いたタオル入ってんだろ? よこしな! もちろん新品だよ! 使い古しなんてよこしたら、ただじゃおかないよ! 」


 さっきからバットを担いで、目の前で起きているドタバタに知らんぷりを決め込んでいた燕男だが、天使が捲し立てる指示に「えー」とか煩そうにしながらも渋々従って、腰に引っ掛けていたポーチの中からビニールの封を切っていない新品のタオルを取り出して、放り投げてよこした。

 それを上手に片手キャッチした天使は、


 「そのまま、じっとしてな。顔ぐらい拭いてあげるから。」


 ビニールを破ってタオルを取り出すと優しく雨水や涙でドロドロになった顔を拭いてくれた。


 (この人、ホントに良い人! 優しいし! でも、なんで “オバチャン” みたいな話し方してるの? )


 この第三の人物、そして天使だが、やはり男二人と同じく上だけプロ野球球団、“YG” のユニフォームを着ている。

 但し、どう見ても中学生? ぐらいの小柄でポニーテールのカワイイ女の子だったりする。

 小学生じゃないと思うが、身長は150センチも無い感じ?

 それなのに、口の利き方や身のこなしが中年のオバチャンそのものである。

 YGのユニフォームは兎も角として、下はデニムのミニスカートに生足スニーカーと歳相応なのに、蟹股でしゃがんでいるので京子からはパンツが丸見えだったりもする。


 (でも、良く分かんないけど、このチビッ子、男二人より立場強そうだし頼りになりそう。)


 どう見たって歳は一番下で、一番小さいのに、この女の子が、この3人組みのリーダー格らしい。


 「さっ、これで良し。顔以外は自分で拭いたほーが良いね。」


 そう言ってチビッ子は顔を拭き終わったタオルをササッと折りたたみ、京子に手渡した。


 「さてと、まずはあんた! この娘さんに謝んなさい! 」


 チビッ子に言われた鯨男は、後頭部を摩りながら、少し不貞腐れたような言い方で、


 「悪かったな。」


 と、一応は謝罪を口にしたが、顔は仏頂面、心は全然こもっていなさそう。

 それが気に入らなかったらしいチビッ子は、


 「そんなんじゃ、謝ったうちに入んないわよ! まったくもーっ! ちょっとは、娘さんの心を和らげてあげようとか、気をつかってごらんなさいな! 」


 ビシッと人差し指を突き付けるチビッ子に対して、鯨男の “え? 誰が? 何のために? ” という心の声が聞こえてきた。


 「あんたがやるのよ! ホラっ! 普段、患者の心を和らげてあげたりすんでしょ! それとも、しないのかい? 」


 「いや、するし、してるし。」


 「んじゃ、それやんなさい! 」


 チビッ子が横にサッと移動し、鯨男に場所を譲った。

 再び、京子の目の前に鯨男の巨体が迫る。


 (なんか、質量の変化が凄いんだけど。)


 チビッ子との差が激し過ぎて、さっきよりも圧迫感と恐怖感が倍増した感じがする。


 「おいっ! 」


 鯨男の、さっきと同じドスの利いた声。


 (やっぱ怖いって! さっきよりも怖いじゃん! )


 そんなビビる京子に追い打ちを掛ける鯨男。


 「おい! 返事ぐらいしろ! 」


 「は、はっ、はい! 」


 (あ? 声出た! )


 鯨男に脅されて、思わず口が動いてしまった。

 でも、未だ腰は立たないから、逃げ出せない。


 「よし! 」


 鯨男が満足気に頷いている。


 (何が “よし” なのよ! ちっとも良くないわよ! )


 「それじゃあ、よく聞けよ。」


 鯨男は軽く息を吸い、妙な溜を作ってから、その口を開いた。


 「()の日のパーティなんて、()()()んどくさい。」


 (え? )


 ポカンとして、目が点になっている京子を見て、鯨男が首を傾げた。

 そして、何か納得したような顔をしてからポンと膝を打ち、一つ咳払いした後に、


 「ア・メ・ノ・ヒ・ノ・パ・ー・テ・ィ・ー・ナ・ン・テ、ア・ー・メ・ン・ド・ク・サ・イ。」


 一字一句を刻みながら、ゆっくりと、もう一度同じセリフを口にした。

 そして、言い終わってからニヤリと笑った。

 一瞬にして京子の背筋は凍り付いた。

 気を失いそうになったが、何とか踏み止まった。


 (怖い! 怖い! 怖い! 怖い! この人怖い! ナニコレ? もしかしてダジャレ? なんで今? ってか死ぬほどつまんない! ってか死にそう! 凍死しそう! 助けてお母さん! 助けてチビッ子さん! )

新キャラ2名、少し濃いめで登場です。

プロローグ“斉藤京子さんの受難”も少し続きます。



アクセス解析って一度見てしまうと

気になるもんですね・・・さすがに凹みます。

ここまで、お付き合いいただいている皆さんには

本当に感謝です!


第2章も頑張りますので

ブックマーク、評価よろしくお願いいたします。

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