11.遊学と調査①
出発。
僕たちは出発した。
国内のあらゆる街を見られるように調査コースは定められていた。最後に西国のホヨウを回ることになっていた。
「とりあえず、この南方のエラン地方からやな」
「ああ、それぞれの街の様子を知りたい」
「エラン川の汚染調査もあるんyやなぁ」
「面倒臭いか?」
「面倒臭い」
「まあ、そう言うな」
「ロウと仕事が出来ることは滅多に無いから楽しいけどな」
「それは光栄だ」
「ロウは5千人長だから、次に昇進したら1万人長。将軍だな」
「そううまくはいかんよ」
「やっぱり士官学校へ行った方が何かと有利なのか?」
「そうだな」
「まあ、ロウは高専でも成績が飛び抜けて優秀やったからなぁ」
「いや、クラウディオがいる」
「あの陰気な老け顔か?2番だったよな」
「卒業試験の決勝戦、あいつは明らかに手を抜いていた」
「へえ、そうなんや」
「今、クラウディオが何をしているのかわからんがな」
「あんな陰気な嫌な奴のことなんか忘れろや」
「そうだな」
最初に訪れた街は平和で豊かだった。
町長に街のことを聞く。良いところと悪いところ。悪いところは改善してほしいという依頼だ。だが、特に困ったことは無いらしい。
その日は、その街で1泊した。
「何の変哲も無かったな」
「そうだな」
「このまま“困ったことはありません”が続いたら遊学にならないんじゃないか?」
「そうだが…まさかそういうことは無いだろう。辺境に近づけば、貧しい街や治安の悪い土地があるはずだ」
「そうかな」
次の街も平和で豊かだった。“困っていることはありません”とのことだった。
「おいおい、これだけの大軍で回る意味があるんかいな」
「だから、県境に行けば…」
だが、辺境までは遠く、“困っていることはありません”という街が続いた。
幾つかの街を回ってエラン川沿いを通っていると、ロウの部下が走ってきた。
「エラン川の汚染地点が近づいているかもしれないとのことです」
「よし、進軍停止」
一同、足を止めた。
学者達の出番だった。
報告のあった場所の近辺をじっくりと調査していく。
「ここが汚染地帯なら、何かありそうやな」
僕が言うと、
「そうだな」
ロウも同意した。
その時!
「報告します。モンスターの大軍です」
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