10.風塵⑤
刺客、再び。
「隊長は、何歩ですか?」
帰り道で、ジェーンが聞いてきた。
「何が?」
「矢を避けられる距離のことです」
「ああ、確実なことを言うと6歩だな」
「そうですか?」
「それがどうかしたか?」
「いえ、ふと興味が沸いただけです」
「そうか」
その晩、僕はテントの中で寝転がっていた。
「ジェーンです。失礼します」
「おお、コーヒーでも飲もうか」
「では、私が淹れます」
「じゃあ、お願いするよ」
「はい」
僕はまた寝転んだ。傷は完治していたが、まだ体がだるい。
僕はジェーンに背中を向けて寝転がっていたが、場の雰囲気が変わったことを感じ取って振り向いた。振り向いたら、脇腹に矢が刺さっていた。
「6歩以内です、隊長」
僕は目眩がして立ち上がれない。ジェーンがテントを出ようとしたとき、
「隊長、マリアです。中に入ってもよろしいですか?」
マリアがやってきた。
「マリア、ジェーンを捕らえろ」
「はい」
マリアがテントの出入り口で通せんぼした。ジェーンは抜刀した。マリアも抜刀した。剣撃は数合。マリアがジェーンの捕縛に成功した。
「マリア、よくやった。ありがとう」
「隊長、その傷は?」
「ジェーンにやられたんだが、行動には理由がある。まずは理由を聞いてみたい」
「レン様、その矢には毒を塗っていました。回復魔法も効きません」
「僕が助かる方法はある?」
「解毒剤を飲めば回復します」
「解毒剤はあるの?」
「私のポケットの中です」
「マリア」
「はい」
マリアがジェーンのポケットから小瓶を取り出した。
「飲んで回復魔法を受けたら命は落としません」
僕はマリアに薬を飲ませてもらった。
「マリア、僕が動けるようになるまで部隊はここに留まる。ジェーンは謹慎。後のことは、悪いがマリアがやってくれ。ただし、ジェーンのことはまだ内密に」
「わかりました」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい。回復魔法の責任者を呼びます」
薬のせいなのか毒のせいなのか、体がだるくて眠い。僕はすぐに眠った。
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