9.風雲④
ドラゴンとの死闘。
先頭をきって真正面から突っ込んでいった100人余りがドラゴンの吐く火炎に巻かれた。次々に落馬していく。中にはジョンもいた。真っ黒焦げになっていた。
「隊長、ジョンが」
ジェーンが言った。
「わかっている。左に寄れ。左から敵の背後に回るぞ」
僕の指揮で千騎が迂回した。
真っ先にドラゴンの後ろに回ったのは僕たちだった。
僕は大剣でドラゴンの背を斬った。堅い。血は流れたが傷が浅いのがよくわかる。次は大剣を刺した。少しの手応え。だが、まだまだ浅い。僕の千人隊の内、斬り込み隊に所属している皆も切り倒そうと剣や槍を振るうがいずれも傷は浅い。
僕は尻尾を斬ってみた。胴体よりは少し柔らかい。僕は尻尾の同じところばかりを連撃した。ジェーンも参加してきた。やがて尻尾を斬り落とすことが出来た。
「尻尾を斬り落とした。やれるぞ」
僕は味方を鼓舞した。
だが、実際はドラゴンを余計にエキサイトさせてしまった。まさに暴れ狂い始めた。シローがドラゴンの動きを鈍らせるために囮になっていた。
気が付くと、ドラゴンの正面は火を吐かれてやりにくいので、正面は弓兵隊と魔法攻撃隊が攻めていた。左側面にライ達、右側面をロウ達が斬りかかっていた。そして僕たちは背後からの攻撃。
1つわかったのは、ドラゴンに火の魔法はあまり効かないということだった。自ら火を吐くのだから当然かもしれないが…。魔法攻撃隊は土や氷の魔法で戦い始めていた。
「魔法攻撃班、土壁で防御も出来るぞ。防御隊というまく連携をとれ」
リーが指示を与えている。
で1番大変だったのは防御及び回復班だったのかもしれない。疲労が蓄積されているのがよくわかる。
「回復班、もう少し頑張ってくれ」
リーは周囲をよく見ている。
シュウが正面突破を試みた。スピードに自信があるだろう。馬からドラゴンに乗り移り、ドラゴンの首筋を貫いた。手応えはあったようだがすぐに振り落とされた。
続いてリーが正面突破。馬からドラゴンに跳び乗って、ドラゴンの口の中に長槍を突き刺した。これは効いた。
そして僕が、ドラゴンの背を駆け上って頭を大剣で突き刺した。頭は弱点の1つだったのかもしれない。吠えると同時に舞い上がろうとした。
その時、ライが左側面からドラゴンの左目を剣で突き刺した。そして、左目はロウ。
最後に跳び上がったのはシローだった。正面からドラゴンの鼻を矛で貫いた。
ドラゴンは地に伏した。
まだ息はあるので斬り込み隊全員でドラゴンにとどめを刺した。
ホッと一息。
その時、バリバリという音が聞こえた。振り向くと、囮にしていた卵が割れ始めていた。僕は慌てて卵の側まで移動して殻を大剣で斬った。つもりだったが斬れなかった。堅すぎる。卵は6個。雛とはいえ6匹も生まれたら太刀打ちできない。気付くと、リー、シュウ、ロウ、ライ、シローがそれぞれ卵1個ずつに攻撃をかけていた。
だが、どうしようもなかった。卵の殻は破れ、ドラゴンの雛が生まれていく。
刺そうとして、雛が僕にすり寄ってくることに気付いた。僕以外の5人も、雛にすりすりとなつかれていた。
「これは?」
「初めて見た者を親と勘違いしているんだ」
リーが解説してくれた。
「私は、この雛を連れて帰ります」
「なんだと?気は確かか?」
「もう少し大きくなったら、馬の代わりに乗ります。貴重な戦力になるでしょう。それに、これだけなついていたら害は無いでしょう」
結局、僕たち6人はドラゴンの雛を連れて帰った。6人とは、僕、リー、シュウ、ライ、シロー、ロウだ。
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