2.門出①
ソフィア王女、登場。
卒業式を目前に控えた頃、僕は退院した。
これから王宮に行って、第3王女のソフィアに会わなければいけない。就職は決まっているが、事前の挨拶というものがあるらしい。僕は迎えの馬車に乗った。
歩いたら相当遠いので、馬車での送迎はありがたかった。退院したものの、まだ通常の8割くらいまでしか回復していない。
やがて、馬車は王宮の門で止まった。入場の手続きがあるらしい。すぐに馬車はまた進み始めた。
馬車が完全停止して、僕は馬車から降ろされた。降りると侍女らしき女性2人が頭を下げていた。
「ソフィア様付のレン様ですね」
「はい、国立ノア戦士高等専門学校のレンです」
「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」
侍女に先導され、僕は後についていった。
侍女達がすごく美人で驚いた。王宮勤めを選んで良かったかもしれない。
「こちらです」
侍女が数多い部屋の一室の前で立ち止まった。
侍女がノックをする。
「レン様をお連れしました」
「ご苦労様でした。中へ」
ドアの向こうから、思ったよりもか細い声が聞こえた。
侍女がドアを開き、
「どうぞ」
と言われたので中に入った。広い部屋だった。
「国立ノア戦士高等専門学校のレンです。失礼します」
中に入ると、ドアが閉められた。
中央の奥の大きなデスクの向こうに、上品で美しい女性がいた。ソフィアだろう。
僕は国立ノア戦士高等専門学校の礼服を着ていたが、暑くも無いのに汗が出始めた。マズイ、美しすぎて緊張してしまった。この世の者とは思えないくらいに綺麗だ。
「はじめまして。第3王女のソフィアです」
ソフィアが立ち上がった。
「座って、お茶でも飲みなさい」
「はい、失礼します」
僕はテーブルに座った。するとお茶を出された。
ソフィアの左右両側に、ただ者ではない雰囲気の男女が控えている。左右6人ずつ、計12人。直属の護衛兵だろう。
「あなたは、変わった人ですね」
「どこか変わっていましたでしょうか?」
「いくら就職活動と言っても卒業試験はただの試験、命をかけるほどのことではないでしょう」
「理由はあります」
「何ですか?」
「1つは、足を痛めて得意の高速攻撃ができなかったこと。もう1つは、対戦相手のシンヤのことが文字通り死ぬほど嫌いだったからです」
「それで自爆ですか」
「死体をもてあそぶ魔術も嫌いですが…」
「私が何故あなたを指名したかわかりますか?」
「全くわかりません」
「あなたは自分が傷つくことを怖れない人だからです」
「ありがとうございます」
「でも、入隊後に命を粗末にすることは禁じますよ」
「約束はできません」
「というと?」
「守りたいものを守るためなら、何度でも自爆します」
「頑固ですね」
「申し訳ありません」
「今、私の直属の親衛隊員は300人います」
「存じております」
「その内の13名が側近です。あなたも、4月からは側近です」
「はい」
「よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「では、今日はこれで」
「はい、失礼しました」
僕はドアを開けて、一礼してから去った。
ドアを開けると、先ほどの美人侍女達が控えていた。
「正門へご案内します」
よく考えたら、僕は方向音痴だ。働き始めたら王宮内で迷子になりそうで不安になった。
★メッセージ、コメント、評価、感想、レビュー、ブックマーク等よろしくお願いいたします★




