7.不穏②
ユリウスの笑み。
エラン城にユリウスの一行が再び現れた。突然の来訪だった。
「失礼をお許しください。アポイントをとる間も惜しんで駆けつけてきました」
心配している割にはユリウスはニヤニヤ笑っていた。
「心配して頂いてありがとうございます。ですが、ほんのかすり傷です。もう治りました」
「もう大丈夫なのですか?」
「ええ、皮1枚少し切れただけですから」
「それは良かったです。安心いたしました」
「遠いところありがとうございます」
ソフィアの声には感情がこもっていない。
「ですが、さぞや怖かったでしょう」
「いいえ、信頼している護衛隊員の皆と一緒でしたので」
「そうそう、ソフィア様を守り切れなかった護衛隊員がいるとか」
「そんなことはありません。瀕死の重傷を負っても私を守ってくれました」
「噂の自爆剣士ですか?」
「そんなに噂になっていますか?」
「ええ、何故かソフィア様が採用なさったと」
「どういう意味ですか?」
「自爆しか出来ない護衛隊員だから守れなかったのではないかと」
「自爆をしなくても有能で優秀です」
「いかがでしょう?そろそろ私の居城に…」
「そのようなことは考えておりません」
ソフィアの声が次第に荒々しくなってくる。
「お父上の国王陛下様の方は、私からお話をさせていただきますよ」
「私はまだ結婚を考えてはおりません」
「失礼ですが、この城よりも私の城の方が安全です」
「今は考えておりませんので」
「それでは…」
ユリウスは、あの手この手でソフィアの気を惹こうとしたがソフィアの鉄壁のガードに阻まれて帰った。
去りゆくユリウスの後ろ姿をレイラが睨み続けた。
帰りの馬車の中。
「ちょっと脅かせば態度を変えると思ったのだがなぁ。意外に芯が強いようだ」
「計算外の対応でしたね」
ユリウスと側近が話していた。
「外見とは中身は違うということか」
「国王の方から攻めた方が良いかもしれませんね」
「そうだな。だが、自爆剣士は気に入らないな。あいつはソフィアに気に入られている」
「王女を守れなかったのです。左遷されますよ」
「憂さ晴らしに、あいつがソフィアを守れなかったという噂はすでに流している」
「さすがでございます。これで目障りな者が1人消えますね」
「そうだな」
ユリウスが笑った。
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