セカンド ファンタジー (第5章 第10話)
小話――独立の兆し 七 爆発と、マントの集団(下)
フビジたちよりも出遅れた三人組だったが、結果的には、彼らのほうが早くに現場へついた。武器を手に集まった人の数は多く、黒山のようである。幸いにも、政治の館には、まだ火の手が回っていないようであったが、あちこちの建物から煙が出ているあたり、それもいつまでもつのかはわからない。今この瞬間に爆発したとしても、全く不思議ではない状態なのだ。
「おっと~。マジか。だ~いぶ、いやがるじゃね~か。めんどくせ~な~。でもまあ、姫様。来て正解でしたね~。こんなの、プティーだけじゃどうにもできないでしょ」
呑気におしゃべりをする部下とは対称的に、塔の上から暴徒を見下ろす女の目つきは、普段に増して異様なほどに鋭い。
(……おかしい。暴動に参加している人数が多すぎる)
しかめ面のままに眼下を睨んだまま、女は沈黙を貫く。そんな彼女に気を遣って、坊主の男は、いまだ茶化すように笑いつづける同僚を、足で軽く小突いたのだが、それでも変わらずにつづけることを悟ると、やがては自身もあきらめたように、広がっていく暴徒の群れを見下ろした。
そうして、女が現状を不自然に思い、考えを巡らせている間にフビジが追いついた。気がついた女が、ちらりとそちらを一瞥する。
(面倒な女がついて来たな)
女の心中を察したかのように、艶然と声をかける者があったが、はなはだ奇妙なことに、その姿はだれの目にも見えなかった。
『殺しますか?』
『いいや。せっかくだ、道化として使おう』
無論、二人にしかわからないやり取りである。ゆえに、それをフビジが気にすることは決してない。
「先ほどの者か。ちょうどいい。手を貸せ。我々もこれを止めようとしている」
「……。それについてはかまわないが、そちらは何者か?」
フビジのもっともな疑問を、女は馬鹿にするかのように軽く受け流した。
「何、通りすがっただけのこと」
「……」
たまたま寄っただけというのは、いささか無理があるのではないか。フビジは女の返事に不信感を抱いたが、よく考えれば、自分たちも確固たる目的があって、政治の館に向かっていたのではない。それを思えば、この女の言うことも、あながち嘘とは断じられないのかもしれない。
「それより早くするぞ。我々で東側を受け持つ。貴様は西だ」
言うやいなや、こちらの返事も聞かずに、女たちは飛び降りていった。いくらフビジよりも数で優っているとはいえ、東と西とでは、暴徒の数に天と地ほどの差がある。はたして本当に大丈夫なのかと、そう心配するフビジであったが、すぐに首を大きく横に振って、頭から雑念を追いやった。
いずれにせよ、この暴動は止めなければならないのだ。たとえ、それが一人であったとしても、やることは変わらない。考えなおしたフビジもまた、まもなく地面へと飛び降りた。
そうして、フビジは暴徒たちへと向かって走りながら、腰に佩いてあった剣を抜いたのである。
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