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【祝! 107000PV突破】ファースト ファンタジー  作者: 崔梨遙
第7章 セカンド ファンタジー フビジの冒険
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セカンド ファンタジー (第5章 第8話)

小話――独立の兆し 五 暴動の前兆

 大通りの中ほどにて、三人組が路地へと入っていく。全員が建物の陰に入ると、男の一人が、先頭を歩いていた女に向かって声をかけた。


「しっかし、またどうして、姫様はこんなところに来たんですか~? 一応、ここは敵国ですよ~」


 ちらりと女が一瞥する。くだらないことを尋ねるなと、そう言わんばかりの流し目であった。だが、今はほかに何もすることもないのだ。答えたからといって、罰があたるわけでもあるまい。女は考えなおすと、抑揚のない淡々とした声で応じた。まさしくそれには、何の感情もこもってはいないのだろう。


「旧ルフランの独立は、我々にとって望ましいことではない。プティーが襲われる恐れがあるからだ。ここには、このまま貿易都市として栄えてくれたほうが、色々と都合がいいのだ」


「な~るほど。ルフランの残党が、何かしでかすっていう、タレコミがあったんすね~」


「……そんなところだ。そろそろ時間だ。顔を隠すぞ」


 言うやいなや、全員が一斉にマントのフードをかぶる。青白色を基調に、背中にオオワシの刺繍がついた、特徴的なマントであった。それは近隣諸国のものではない。明らかに異文化、それも極東のものである。


 女の声に合わせ、三人の顔には速やかに魔法がかけられた。それは波打つ水面のように、対象の顔が見えにくくなるものだ。注意して見ようとすればするほどに、その波は早く大きくなり、ますます相手の顔はぼやけてわからなくなる。


 かけられた魔法に触れようとするかのように、男の一人が自身の顎に手をやった。無論、それは手に取れるようなものではなく、そこには男の無精ひげがあるばかりである。


(本当に、ペルフィナ嬢ってついて来てたんすね~。ずっと透明化しているから、わっかんね~わ)


 肩をすくめるようにしておどける部下に対し、女が訝しむような視線を送る。


「どうかしたのか?」


「いや~、な~に。ルフランの残党っつう目星をつけているなら、どうしてうちらは、こんなところに留まっているのかな~って、そう思っただけですよ~。奴らにとって因縁があるのは、政治の館でしょう。中央で待っていたって、仕方ないんじゃないですか~?」


 ルフランがプティーを攻め滅ぼせたのは、レイラたちヴィルヘルム家と、マルゴディーの一族との間で起こった、国を二分するほどのごたつきがあったためだ。マルゴディーがヴィルヘルムを追いだし、そうして国が弱体化したところを、ルフランが横から奪い去ったのである。好機に乗じ、ルフランが漁夫の利を得られたからこそ、まんまとプティーを落とすことができたのだ。


 ゆえに、決起としての意義を高め、民族として奮い立ちたいのであれば、今一度政治の館を狙うほうがふさわしい。しかして、なぜ自分たちは国のちょうど中ほどで、立往生を決め込んでいるというのか。もっと、政治の館に寄るほうがいいのではないかと、暗に進言する部下の指摘は、ある意味では正しかった。


「万が一を避けるためだ。プティーにしてみれば、貿易の館(ヴィルヘルム)といえども、まだ民族的な深い意味がある。焼け落ちたままだからといって、ルフランの残党が狙わん保証はない。士気の高め方とて、必ずしも味方を鼓舞するだけじゃないのだ。相手を執拗に蹴落とすという方法もある。……それに、ここからでも十分に間に合うのだ。どちらでもかまわないだろう。それとも、あらかじめ近寄っていないと、お前には止める自信がないのか?」


「……ご冗談を。姫様の次に強いのは俺ですぜ~」


 それは隣の男よりも自分のほうが強いと、そう暗に言っていたのであるが、坊主にその発言を気にするそぶりはない。あまり、どちらが上であるのかということには、執着していないと見える。


 このやり取りから少しして、政治の館付近で火の手があがった。


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