セカンド ファンタジー (第4章 第53話)
夜襲。
「なあ、兄貴」
夕刻。
レモネードが言った。
「なんだ?」
「夜襲をかけようぜ」
「何故だ?」
「今ならまだ数で勝っている。夜襲をかける余力もあるじゃないか」
「余力があるからといって、夜襲をかけなければならないということはないぞ」
「なあ。俺は戦って勝ちたいんだよ」
「負けなければいいと言っているだろう」
「それじゃあ、武人として情けねえよ」
「お前のせいで戦力が削られているんだぞ」
「だから、夜襲で大戦果を挙げるんだよ」
「あのなぁ、敵も馬鹿じゃない。夜襲の警戒はしているぞ」
「そんなの、ぶつかってみないとわからねえじゃねえか」
「ああ、もう、わかった。1万の兵を連れて行ってこい。一撃離脱で早く帰ってこい」
「ありがとうよ。敵の糧秣を狙うぜ」
「約束だぞ。一戦交えたらスグに戻って来い」
「わかったよ」
「ママレード」
「はい」
「お前もついていけ。すぐに退却するように」
「はい」
カスタードはため息をついた。
ということで、フビジ達の読み通り夜襲をかけられた。
だが、フビジは勿論、シロー達も予期していたので鉄壁の守りで対応した。
特に糧秣の警備は厳重にしていたので被害は無かった。
ドルート軍は全てを燃やし尽くそうと火矢を放つのだが、カルデア軍はテントなど燃えやすいものを湿らせていたので、ほとんど損害は無かった。
レモネードは怒った。基本的に彼は自分の思い通りにならなければ怒る。
「兄貴、撤退だ」
ママレードが言った。
「何を言っている、何の戦果も無く帰れるか!」
「結果がどうあれ、一撃離脱の約束だよ」
「何を言っている、俺は帰らんぞ」
「ダメだよ、帰らなくちゃ」
「そうだ、敵将を探そう。敵将を討ち取ればそれでいいんだ」
「ダメだよ、兄貴」
「お前も敵将を探せ!」
そこへラインハルトが現れた。
「見ろ!そこに敵将がいるではないか」
「ドルートの将ですか?」
「そうだ、レモネード将軍だ」
「僕はまだ5千人長なのですが、お手合わせ願えますか?」
「5千人長か…仕方がない、相手をしてやろう」
「では」
「来い」
「氷塊!」
突然、巨大な氷の塊をぶつけられそうになったのでレモネードは驚いた。驚きのあまり身動きが出来なかった。
レモネードを救ったのはママレードだった。
「兄貴、退散だ」
「何を言っている」
「兄貴、こいつはヤバイ」
「しかし…」
「俺は逃げるぜ!」
ママレードは撤退を始めた。
仕方がないのでレモネードも撤退した。
すぐにカルデア陣内は静かになった。
フビジも自分のテントに戻った。
「何だったの?」
ショコラが言った。
「夜襲だ。まさかこうも簡単に引くとは思わなかったがな」
フビジとショコラはすっかり仲良くなっていた。
「目が覚めたわ。お茶を淹れるわね」
「ありがたい」
夜中のティータイム。
「お姉様」
「お姉様ぁ」
マリーとテレサもやって来た。
「眠れなくなったのか?」
「ええ」
「それじゃあ、皆でお茶を飲もう」
「フビジ様」
ギルバートも来た。
「今は女子会だから男はダメよ」
「そんなぁ」
その日の夜は長かった。
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