セカンド ファンタジー (第4章 第37話)
テレサとフィリップ。
フィリップが歩いていると、テレサと顔を合わせた。
「お疲れ様です、テレサ様」
「お疲れ様ー!。なんか上機嫌みたいやな。せやけど、私のことを呼ぶのに“様”はいらんよ」
「いえいえ、国王陛下のお嬢様ですから」
「ここの隊員も、みんなテレサって呼んでくれるんやで。まあ、部下が出来て部下に“様”と呼ばれるのは仕方ないけどな…」
「やっぱり階級の下の者は“様”をつけるんじゃないですか」
「ほな、聞くけど、あんたに階級はあるんか?」
「…無いです」
「そやろ?お姉様の私兵やもんなぁ」
「そうですね。そもそも軍属ではありません」
「せやから、あんたには私のことテレサって呼び捨てにしてほしいねん」
「呼び捨てはちょっと…では、“テレサさん”でいいですか?」
「“さん”かぁ…まあ、ええわ」
「じゃあ、そういうことで」
フィリップが退散しそうになるのをテレサが止めた。
「ちょい待ち!」
「なんでしょう?」
「私のテントにおいでーや。お姉様のこととか聞きたいねん」
「はあ…」
フィリップは手を引っ張られてテレサのテントまで連れていかれた。
「お話というのは何でしょう?」
「ちょっと待って、紅茶を淹れるから」
「……」
やがてフィリップの目の前にティーカップが出された。
「ずっと東部戦線にいるから退屈しとったんや」
「そうだったんですか」
「さっきはどないしたん?お姉様のテントから出て来たみたいやったけど」
「あ、気付きましたか?」
「夜這いか?」
「そんなことしたら斬られちゃいますよ」
「ちゃうんか?なんや、おもろないなぁ」
「好意は抱いていますけどね」
「お姉様に惚れてんのか?」
「さあ、どうなんでしょう」
「大事なところをはぐらかすんやな」
「まあ、いいじゃないですか」
「ほな、お姉様の所に何をしにいってたん?」
「お給料をもらいに行ってたんです」
「戦争の真っ最中にそんなことしてたんや」
「戦争の真っ最中だからこそです」
「なるほど。そういう考え方もあるんやな」
「そもそも、私は私兵なので王都で留守番をしていても良かったんです」
「そう言えばそうやな。なんで来たん?」
「戦場はお金の臭いがしますので」
「わかりやすいなぁ」
「わかりにくいよりいいでしょう?」
「せやけど、なんでそんなに“お金”“お金”って言うんや?」
「お金がほしいからに決まっているでしょう」
「何に使うんや?」
「さて、何に使うでしょうか?」
「高価な物がほしんか?」
「いやいや、もしかしたら都で酒池肉林の大騒ぎをするのかもしれませんよ」
「なんやそれ。まあ、話したくないならええわ」
そこでフィリップが笑った。
「なんや?急に」
「いや、やはり姉妹だなぁと思って」
「お姉様と私が似てるんか?」
「ええ。詮索しなくてアッサリしているところが」
「そうかな?そうなんかな?」
「だから私のような流れ者にとっては居心地が良いのです」
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