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【祝! 107000PV突破】ファースト ファンタジー  作者: 崔梨遙
第7章 セカンド ファンタジー フビジの冒険
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セカンド ファンタジー (第4章 第12話)

小話――東部戦線 八 大魔法時代

 レンの時代とフビジのそれとでは、魔法に関して決定的な差があった。白魔法が極端に劣化していたのである。いや……その表現は、いささか正確さを欠いている。


 逆である。


 黒魔法に革命が起こったのだ。


 魔法による攻撃、はては、それを施された武器による裂傷であっても、現代の白魔法では治療が著しく難しい。受けた傷が治らないのである。それによって最も多くの利益を得たのは、当然ながら軍事国家のみであった。戦争は、大魔法時代とも呼ぶべき暗黒の中へと、想像を絶する速度で突入したのである。


 この一因を、かの悪名高き王女が担ったのではないかと、そう分析する学者も少なくはない。事実、ベアトリーチェの魔法理論は、その道の一派を形作るまでになっていた。死してなおも、その影響力はすさまじかったのである。



「見えたぞ! あそこだ!」


 モニカ隊の再起を図るべく、ラインハルトの部隊から、一時的に離れたフビジであったが、思いのほか馬の歩みは遅かった。


「クソッ! こいつら、一人一人がマジで(つえ)え。さっきまでとは、まるで別人じゃねえか」


「ケイジ! 泣き言を言うな。テレサの部隊はもう目と鼻の先だ!」



 部下を叱咤するフビジであったが、敵の手ごわさについては、彼女も認識するところであった。現に、ここにたどり着くまでにも、ひやりさせられる場面が何度もあった。フビジでさえもが、そうなのだ。ともに飛び出した部下はなおさらであろう。さすがは、大国ドルートである。兵の練度が生半可なものではない。やはり第一陣は、妖精の水遊び(ローレライ)の効果が高かったため、簡単に倒すことができただけなのだろう。


 そうであるならば、ますます、モニカ隊を敵に消させるわけにはいかない。この先の戦いでも、彼女たちの力は必ず重要になる。


 フビジには、その確信があった。



「お姉さま! こっちやで!」


 ようやくのことで、テレサたちと合流することができた。だが、安心はできない。見る間に退路は塞がれていく。急いで脱出しなければ、フビジの隊ごと、瞬く間に敵に壊滅させられてしまうだろう。


「無事か、テレサ?」


「うん。私は……。でも、みんながかなりやられてしもうた」


「反省は後回しだ。……お前たち! もうひと踏ん張りだ。ここを抜けるぞ! フィリップ、魔法で道を開いてくれ!」


「了解です……!」


 すぐさま踵を返すフビジたちの姿を、遠くでクラッカーが目を細めて見つめていた。







 水の海から一転、戦場は火の海と化していた。その中をカルデア兵は必死に逃げ惑う。そんな地獄のような光景を、複雑な表情をしながら、見つめている人物がいた。その顔が帯びた恐れと驚きとの色は、不規則に垂れる汗によって、もの悲しく強調されている。もはや、その汗は、どんな理由で流されているものなのかさえ、見当もつかない。


 その人物とは、無論クラッカーのことである。


「さすが、ゼルフーロ様。いつもながら桁外れです」


 カルデア側に大きく傾きかけた盤面は、ゼルフーロが強引に戻してくれた。それでも、まだこちらの損害が大きかったのだが、この光景はどうだろう。ドルートの士気はうなぎのぼり、その一方で、向こうにとっては、戦意をくじかれること請負である。大技を決めたあとの結果がこれなのだ。これ以上にない痛手であろう。もはや、これはドルートの勝利と言って差し支えない。


 そんな中で、一つの部隊にクラッカー目を留めた。言わずもがな、フビジの部隊である。この場にあって、あろうことか、息を吹き返そうとしているではないか。


「ずいぶんと、威勢のいい奴がいるな。仮面の剣士……か」


 馬上から、ちらりと兵士を一瞥し、クラッカーは声をかける。


「そこのお前。念のため、ほかの者にも忠告しておけ。長身のチャラい男も忘れるなよ。奴も中々の手練れと見える」


「はっ、ただいま!」


 クラッカーからの増援により、さらにフビジたちは窮地に陥ることとなる。

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