6.エランの日常①
穏やかなエランの日常。
勤務中、僕は何度も欠伸を噛み殺した。
「レン、たるんでいるぞ」
レイラにたしなめられる。
「すみません」
勿論、王宮も平和だったが緊張感はあった。エランのソフィアの居城(エラン城)に着いて1週間余り、緊張感も失いかけていた。エランはただ平和なだけで緊張感も無い。
「レン、退屈ですか?」
デスクで公文書の処理などをしているソフィに言われた。
「退屈ではありません」
「明日、南の街へ行きます。」
「どのようなことでしょうか?」
「エラン地方の有力者と会います」
「ソフィア様がですか?」
「ええ、今回は私が出向きます。しっかり護ってくださいね」
「はい」
「王宮のあるイカロス地方では滅多にモンスターは出ないのですが、こちらではモンスターが出てくるのも珍しくないのですよ。主に国境付近ですが。山賊なども現れるんですよ」
そしてソフィアは少し笑った。
「緊張感を失い欠伸が出るのがエランの日常ですが、有力者に会うのも、たまにモンスター退治をするのも、山賊退治をするのもエランの日常です」
「さようでございましたか」
「少しは緊張してきましたか?」
「はい」
「明朝、その有力者の元を訪れます」
「はい」
「それから」
「はい」
「モンブラン将軍とは親しくなりましたか?」
「いえ、城に着いたときに挨拶をしただけです」
「モンブランは、いつも留守居役なのです」
「と、おっしゃいますと?」
「エラン軍の総大将はリーで、副将はシュウとモンブランです」
「さようでございましたか」
「リーとシュウを私が連れて行くので、いつもモンブランに留守を任せています。モンブランとも親しくなってください」
「はい」
「何故、総大将のリーと副将のシュウが私を護衛しているか不思議ですか?」
「はい」
「機会があれば、本人から事情を聞いてください」
「はい」
シュウが笑っていた。
せっかくソフィアが話しかけてくれたのに、1時間ももたず僕は欠伸を噛み殺して、
「レン!」
レイラに怒られた。
とにかく緊張感に乏しいのがエランでの日常だった。
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