セカンド ファンタジー (第3章 第17話)
キュウとアヤメ。
「私はアヤメ様を恋愛対象としては見ておりません」
「かなりの美人だぞ」
「かなりの美人だと思います」
「性格もいいぞ」
「性格もいいです」
「なのに恋愛対象ではないのか?」
「はい」
「勿体ない」
「勿体ないですね」
「アヤメ様とくっついたら出世も出来るぞ」
「そのような出世は望んでおりません」
「そうか」
「すみません」
「もしかして他に好きな女性がいるのか?」
「……」
「まあいい、そこは深く詮索しない」
「すみません」
「好きな人が誰かということまで聞かない」
「これからどうしましょう」
「今まで通りでいいんじゃないか?」
「そうでしょうか」
「まあ、なりゆきに任せよう」
「アヤメ様は私の気持ちを聞いてくれませんので」
「そうだな」
「話というのは」
「ああ、これだけだ。お前の気持ちを確かめるようにハンベー様に言われたからな」
「ハンベー様から上手く言ってくれるでしょうか?」
「わからんが、報告はしておく」
「お願いします」
「では、出ようか」
フビジとキュウは店を出た。
翌日、フビジはアヤメに呼び出された。
また茶店だった。
「おう、よく来てくれた」
「アヤメ様、何のお話ですか?」
「まず注文しよう」
また抹茶と茶菓子を頼んだ。
フビジは怖れていた。
キュウの気持ちを聞かれたらどうしよう?
恋愛対象外とは言いにくい。
違う話題であることを祈った。
「2回、反乱軍が現れた」
「はい」
「この前は私の初陣となった」
「前線に出て来るのはもうやめてください」
「そうはいかん。味方が死線にいるのに安全な所から指示だけするなんて出来ない」
「志は立派だと思いますが、大切なお身体だということを自覚してください」
「うむ…」
「どうかしましたか?」
「何故反乱が起きたのじゃろう?」
「と、おっしゃいますと」
「世の父、キヨマサは民に喜ばれる善政をしいていると聞いていた」
「実際、その通りだと思いますよ」
「だが血が流れた」
「……」
「戦場は思っていたようなものではなかった」
「いかがでしたか?」
「人を斬った感触が残って気持ちが悪い」
「戦場ではお元気だったと思いますが」
「戦闘の真っ最中は興奮していたからな。冷静になると気持ちが悪くなった」
「私も最初はそうでした」
「善い政治というものはそんなに難しいものだろうか?」
「難しいのだと思います」
「私が大人になったとき、私は善い政治ができるのだろうか?」
「善い政治とは?」
「皆が喜び、血が流れない政治じゃ」
アヤメは成長している。
フビジはアヤメを妹のように可愛いと思った。
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