4.風向き④
不審な火事。
シュウの言うとおり、オリヴェルは確かに豚野郎だった。精一杯の笑顔で、激しく汗をかきながら一生懸命ソフィアの機嫌をとっていた。
長い歓迎の宴が終わり、ようやくソフィアはスイートルームに入ることが出来た。その日、夜勤は僕たちシュウの班だった。
ドアの前で立っていると、焦げ臭い臭いがした。
「副隊長」
「おう」
「どこからでしょうか?」
「隣の部屋だな」
「オリヴェルは今日はソフィア様のために貸し切りだと言ってましたが」
「急いで確認しましょう」
ソフィアの部屋から出て来たレイラが言った。
隣の部屋をノックする。反応が無い。僕とシュウでドアを砕き斬った。
ものすごい炎だった。
「ソフィア様を安全なところへ」
「はい」
僕とレイラはソフィアの部屋に入った。
「何事ですか?」
「火事です。お逃げください」
僕は、ソフィアにガウンを羽織らせた。
隣の炎で壁が崩れ始めた。煙もひどくなる。
「ソフィア様、失礼します」
僕はソフィアをお姫様抱っこをして、窓から地上に飛び降りた。勿論、ソフィアは傷つけない。風のクッションで自分とソフィアを守る。
続いて、レイラとシュウとユーリも飛び降りてきた。ユーリはシュウに抱っこされて降りた。
すぐにリーや他の護衛兵と合流した。火の手はホテル全体を飲み込もうとしていた。
300人の親衛隊も集まってきてワイワイ騒いでいたが、
「一同、静かに」
リーの一言で静かになった。
「ソフィア様、お怪我はございませんか?」
「怪我はありません。ありがとう」
とにかくソフィアを守れたので僕はホッとした。
「ソフィア様、申し訳ありません。申し訳ありません」
オリヴェルがパジャマにガウンの姿で現れた。
「あなたも大変ですね、ホテルが丸焼けですよ」
「申し訳ありません。申し訳ありません」
「火事はどうしますか?消火を手伝いましょうか?怪我人はいませんか?」
と、ソフィア。
「いえいえ、大丈夫です、私どもの方でなんとかします。」
火事は思ったよりも早く消し止められた。オリヴェルの配下の者が頑張ったようだ。
僕らは火の手から離れたところでソフィア用の大きなテントを張ってソフィアを休ませた。
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