1.卒業試験②
決勝トーナメントの1回戦が終わろうとしていた。
1.午後の試験②
僕はレン、国立ノア戦士高等専門学校の学生だ。そして、卒業試験が始まった。1学年約200人(内、女子は20~30人)を64人に絞り込む午前中の予選が終わり、トーナメント形式の本戦が行われている。僕は1回戦を勝ち抜いた。
「次はロウやな」
僕はロウに声をかけた。
「ロウなら楽勝だろう」
「優勝候補筆頭だからな」
「頑張ってこいよ」
ロウはクールに
「行ってくる」
と言って立ち上がった。そのまま控え室へと向かう。
「あれだけしか喋らないのにモテるんだよなぁ」
羨ましそうに、ライが言った。
「ひがんでるの?」
とシロー。
「ひがむよ。俺なんて沢山喋って場を盛り上げてるのにモテないからなぁ」
「顔が違う」
と、僕。ロウはずば抜けて男前だった。背も180弱ある。
「お、始まるぜ」
「両者前へ」
ロウと相手が開始線に立つ。相手は、大きな鎌をもっていた。校内で“死神の鎌”と言われているラーの武器だ。ラーの鎌は学校の中では有名だった。
ロウは長槍を持って静かに構えていた。
「用意」
「はじめ」
ラーが動いた。速攻だ。大鎌でロウの首を薙ぎ払う。と思ったら、大鎌は空を切っていた。その時、ラーは背中をトンと押された。後ろを見るとロウが構えて静かに笑っている。一瞬の内に、ロウはラーの背後にまわっていたのだった。
「勝者、ロウ」
女子学生からの声援。僕もライの気持ちが少しわかった。モテるって羨ましい。
「ただいま」
「お帰り」
「死神も瞬殺やったな」
「俺たち4人の中から優勝者を出そうぜ」
ライのテンションは上がっていた。
「それいいね」
「そんなに簡単にいくかな」
「とりあえず、目標は大きい方がええんとちゃうか?」
「ということで、行ってくるよ」
シローが席を立った。
シローは矛を使うこともあるが基本的には弓兵だ。弓兵は接近戦に弱い。なのでシローは様々な体術を会得した。とはいえ、実戦ではどうなるのだろうか?
「構え」
「はじめ」
シローは矛ではなく弓を使うことを選んでいた。相手は動かない。この学校の生徒なら、ある一定の距離まで近づかないと矢をよけられる。1矢を放つタイミングが重要だ。
相手は矛を持っていた。鎖かたびらを身につけているのは弓兵対策なのだろう。
先に動いたのは相手の方だった。シローは矢を放った。相手が下へ避ける。と、相手の喉に矢が刺さっていた。至急、救護班がステージに上がって回復魔法を使い始めた。まあ、命に別状はないだろう。
「勝者、シロー」
「ただいま」
「お帰り」
「まさか実戦で“影矢”が通用するとはなぁ」
影矢とは、矢の下にもう1本矢を飛ばす技で矢の影の矢なので影矢と呼ばれている。影矢は黒く細い。矢と一緒につがえるのが難しい。相手にバレてもいけない。上級テクニックだ。
「接近戦に持ち込んでも良かったんだけどね。接近戦は面倒くさいから」
「とにかく4人共1回戦突破やな」
「続きは明日やからな」
「じゃあ、今日は飲むか?」
僕たちは飲みに行った。
「もうすぐ就職や」
「俺は将軍になるぞ」
「僕は金持ちの私兵でいいな。楽そうだし」
「そういえば、第3王女のソフィア様が来ていただろう」
「ああ」
「護衛を探しているんだろ?」
「王女様が来ていたことに気付いてなかったわ」
「王女様の護衛っていうのもいいな」
僕たちは朝まで飲んだ。
2回戦以降は、明日始まる。特に緊張はしないけれど。
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