22.ベアトリーチェ⑩
ベアトリーチェの悪政。
僕達は、またドラゴンで王都へ行った。シローはついていくものの手柄を立てるチャンスが無いので仏頂面だった。
王宮に着くと、また謁見の間に通された。そこからが長い。寝てしまいそうだ。
「レン」
「はい」
「寝てはいけませんよ」
ソフィアに注意された。
やがて、ベアトリーチェ夫妻が豪奢な衣装で現れた。相変わらずテオドールは着こなせていなくて滑稽だった。
「ソフィア、半年ぶりね」
「ご無沙汰しております、お姉様」
「今日は何かしら?」
「ギデンにいろいろと貢いで半年、逃亡者が減っていないことと、まだ公開処刑が行われていると聞いたもので」
「そうね。民にはもう少し重税に耐えて貰わなければいけないわ」
「どうしてですか?」
「お金が必要だからよ」
「エランからもミキヲからも貢ぎ物を捧げています。その分、民の暮らしは楽にならないのですか?」
「ああ、貢ぎ物はありがとう。助かってるわ」
「何に使ってらっしゃるのですか?」
「王宮の財宝が減っていたからそちらへ」
「それでは意味がないではありませんか」
「そんなことはないわよ、次にまた戦争でも起こったら必要になるのですから」
「食料は民に分配してるわよ」
「……」
「それでも去るなら、仕方がないと思わない?」
「思いません。民が苦しみ殺されることを政治とは申し上げられません」
「レン、あなたは平民出身よね」
「さようでございます」
「平民のことを気にしすぎなんじゃないの?」
「と、おっしゃいますと?」
「もっと広い視野で見ないといけませんよ。高貴な生まれなら、皆わかっていることです」
「このままでは王都がさびれていきますよ」
「構わないわ。王都が豊かになったらどうせ戻ってくるのだから」
「処刑は?」
「国が良くなったら処刑も減るわ。今は現状維持で良いと思っているの」
「ソフィアは何を考えているの?」
「恐怖支配と重税以外に王都を救う方法を考えていました」
「例えば?」
「イロハとの貿易をもっと盛んにします」
「それで?」
「農民には適度な税を。公開処刑は中止…」
「自分の手を汚したくない者の言いそうなことね」
「姉様!」
「私は憎まれ嫌われていることを自覚しています。これが妃としての覚悟です」
「でも、お姉様」
「これ以上話しても平行線よ。やめましょう」
ソフィアは黙った。
「私の政治が気に入らなければ、次は軍隊を率いて現れて来なさい」
「お話しは以上のようですね。では、私達は失礼します」
「宴の用意をしてあるわよ」
「いえ、今日は帰ります」
「あなた達が貢いでくれるから、毎晩宴会ができるわ」
「失礼しますします」
「処刑を見に行かない?」
「は?」
「エランみたいな田舎では退屈でしょう。ちょっと刺激的だから見て行きなさいよ」
僕等は馬車で処刑場へ連れて行かれた。
生き埋め。火あぶり。急所を避けつつ槍で突いていく…。正視出来るものではなかった。
リーは席を立った。他の者もだ。そして僕達はドラゴンに乗って夕焼けの空へ消えた。
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