19.戦の跡⑥
シュウの近況。
「シュウ様、こちらでしたか」
僕は酒場でようやくシュウを見つけた。
シュウは酒場の女性をはべらして昼間から飲んでいた。
「レンか…」
シュウはつまらなそうな顔をした。
そして、酒場の女性に言った。
「ちょっと席を外してくれ」
「レン、飲むんだろう?座れよ」
カウンター席、僕はシュウの隣の席に座った。
僕はワインを注文した。
「どうした?急用か?」
「いえ、そういうわけではないのですが」
「俺のことが心配になったか?」
「…はい」
「俺は大丈夫だ。時間さえ経てば、きっと」
「ユーリは?」
「まだ身体が自由に動かないらしい。リハビリで身体は完治するらしい」
「今、誰が世話をしてるんですか?」
「サラ達だ。サラ達のことも覚えてないけどな」
「シュウ様は?」
「俺に“記憶を失ったユーリの側にいろ”って言っているのか?ツライぜ、それは」
「そう…ですよね」
「子供もいなくなったしな」
「そうですね」
「もう一度、ユーリと一から進展させるには、まだ時間がかかる。時間が欲しいんだ」
「そうなんですね」
「レン、お前、自分が挙式をすることで気を遣ってるだろう?」
「…はい」
「挙式をしろ。幸せになれる奴は幸せになればいい」
「ですが…」
「俺も時間さえもらえれば幸せになるから」
「はい、そうですね」
「今は、放っておいてくれ」
「はい」
「お前の挙式、俺は欠席させてくれ。まだ心にゆとりが無いんだ」
「わかりました」
「すまんな」
「いえ」
「レン」
「はい」
「結婚おめでとう」
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