17.決戦前夜①
ソフィアの覚悟。
西部方面軍から、シュウ達が約3万人の兵士を連れて来た。
「敵部隊を追い抜いて来ました」
本部。シュウが勇ましい報告をしていた。
「こちらへ向かう敵軍とぶつからなかったのかね」
「途中で一戦交えました」
「どうだった?」
「象部隊が邪魔ですね。ドラゴンに乗っている私はいいのですが、騎兵や歩兵が相手するには厳しいです」
「ご苦労だった。今は休んでくれ。この王都で決戦が始まるからな」
「はい」
「シュウ」
「よう、リー」
「決戦だな」
「だが、お前は出陣しないんだろ?」
「ああ、こういう時だからこそソフィア様のお側にいたい」
「わかってるよ」
「だが、ドラゴンは軍に貸す」
「そうなのか?」
「ああ」
「誰が乗るんだ?」
「フーだ」
「なるほど、これでドラゴンを3体ずつ東西に展開できるな」
「そうだ。勝てるか?」
「負けるわけにはいかないだろ?」
「そうだな」
「任せろ」
「任せた」
「今日は飲もう」
「今日は女っ気抜きだ」
夜、僕は侍女に王宮へ連れて行かれた。
「おいおい、この先は…」
護衛隊員だったので王宮の中には詳しい。このまま行くと、ソフィアの寝所に着いてしまう。
着いてしまった。
リーとレイラとユーリとランが扉の両脇に立っていて、チラリと僕を見たが何も言わなかった。少しの緊張感があった。
侍女はノックした。
「レン様をお連れしました」
「入りいなさい」
侍女はそこで役目を終えたようで控えた。仕方がないので僕独りで入室する。
「失礼します」
入ってみて、改めて二人きりなのだと感じた。
蝋燭の炎だけが灯りの薄暗い部屋。
「レン、こちらへ」
「はい」
僕はソフィアの傍らに。
「ベッドの中へ」
「いえ、それは」
「構いません。入りなさい」
「しかし…」
「もうすぐ決戦、もしもあなたが死ぬようなことがあれば私も生きていられません」
「ですが、早まるのは良くないのでは?」
「充分、考えました。あなたと朝まで過ごせたら、あなたを失う不安から私は耐えられるでしょう」
「……」
「不安なの」
「ソフィア様、もしご懐妊となったら…」
「もし赤ちゃんを授かったら、私は自分の生きがいとして独りでも強く育てます」
「それだけの覚悟をなさっているんですか」
「生きていくための想い出がほしいんです」
「赤ちゃんが出来たら?」
「私の生きがいになります」
「ソフィア様」
「護衛隊員の皆には理解していただきました」
「わかりました」
僕は覚悟を決めてベッドの中に入った。
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