1.卒業試験①
戦士高等専門学校の卒業試験、大勢のスカウトマンに見られつつ、主人公のレンは本戦トーナメント1回戦を迎える。
1. 午後の試験
その日から、国立ノア戦士高等専門学校の卒業試験本戦が行われた。
午前中は予選だった。学科と実技でそれぞれ百点、そして審査員ポイント100点として、合計300点。その中で、少しでも高い点を獲得するべく皆一生懸命だった。
客席には、例年通り軍のお偉いさん方や企業の採用責任者が大勢集まっていた。貴人も参列している。護衛がほしいのだろう。今日の試験の結果によって、スカウトしてもらうのが僕らの目的だった。1学年約200人、その内女子は20~30人。200人を64人に絞り込むのが午前中のイベントだった。
「よう、レン。よく残ったな」
友人のライが声をかけてきた。ちなみに、僕は169cm、ライは163cm。ライは自分より体格がいい男達を剣でねじふせる男だった。ライはレンと同じ“剣士科”だ。
「特に苦手な競技や科目がなかったからね。得意の競技や科目も無かったけど」
「まあ、64人に残っていればスカウトマン達の印象もいいだろう」
「そんなもんかな?」
「この大会で優勝して、俺は軍隊に入るぜ。将軍を目指すよ」
「ええなぁ、夢があって」
「レンはどうするつもりなんだ?」
「そんなん、わかれへんわ。幾つかスカウトされたら、その中で探す。特になりたいものって無いから」
「もう少し欲を出した方がいいと思うぜ」
「あ、そろそろ時間だな」
僕たちは大ホールへ移動した。
トーナメントのためのくじ引きがあった。19番。多分、やっかいな男が相手だろう。僕は自分のくじ運の無さを知っている。
案の定、僕が苦手とする“鎖鎌”の使い手だった。“鎖鎌研究会”の会長もやっている。僕はトリッキーな相手が苦手だ。
「先に行ってくるぜ」
ライは控え室へ。代わりに、シローが来た。
「調子どう?」
「特に悪くないけど、特に良くも無い」
「シローはこれからどうやって戦うの?接近戦に持ち込めたら得意の体術でなんとかなるやろうけど」
「いろいろ考えているよ」
「まあ、考えてるやろな。見とくわ」
「おい、ライの戦いが始まるぞ」
ロウが近寄ってきた。
「ロウも、自分のことより他人の心配とは余裕やな」
「いじめるなよ」
「始まるぞ」
僕とライは剣士だった。動きの速さで相手を圧倒するタイプ。スピード重視のため、甲冑は基本的に使用しない。僕は大剣を使うが、ライは標準のものを持っていた。刀が重い分僕の方が少しだけ遅くて、刀が大きい分ライよりも僕の方が攻撃力があった。
ライの相手は女性の弓兵だった。
「構え」
で、弓兵は弓に矢をつがえて待機する。
「はじめ」
どちらも動かなかった。ライとしては、1回矢を放ってもらってから斬り込みたいし、弓兵は、1激必殺のチャンスを待っている。
2人ともしばらく動かなかったが、両者の個性に違いがあった。ライは待つのが大嫌いだった。
先に動いたのはやはりライ。一直線、最短距離で弓兵に近づく。矢が放たれた。ライは紙一重でよけた。この学校では矢をよけれる者は珍しくない。人それぞれ、矢を捕らえる距離によるが矢をつかむことも可能だ。
そして、弓兵の喉には剣先が突きつけられた。
「勝者、ライ」
会場が拍手に包まれた。
「相変わらず命しらずだな」
とロウ。
「一生変わらないんじゃないの?」
「次は僕やね」
僕は観客席を立った。
「頑張れよ」
「無理しない程度にぼちぼちやるわ」
僕は控え室に移動した。
控え室には何人かいた。
皆、戦闘準備をしているが、僕は甲冑も身につけないのですることもなく片隅に寝転がって、自分の名前が呼ばれるのを待った。
「次、レン」
呼ばれたので、僕は起きた。
案内されてステージに立つと、すごく気持ちが良かった。緊張が興奮にかわった。(舞台の上って、気持ちいい!)と思った。
ステージでは、鎖鎌使いのチェーンが待っていた。
お互いに礼をして、開始線に足を合わせて身構える。といっても、僕はいつも構えないで自然体なのだが。会場の熱気に包まれる高揚感がまだ続いている。
「構え」
「はじめ」
途端に襲ってくる分銅。頭で受けると頭が割れるという噂だ。チェーンは僕をどうしても近づけたくないらしい。分銅の攻撃はとまらず、ステージのあちこちを壊した。
やがて、鎖が僕の剣にからみついてとれなくなった。僕は手から剣を話してチェーンの元へ疾走した。チェーンには、まだ近距離戦闘用の鎌がある。
だが、接近戦であれば僕の方が有利!僕は鎌を避けてチェーンの腹部に右手を当てた。
「破」
僕は自分のエネルギーを衝撃波として放出することが出来る。チェーンは吹き飛んでいった。
「勝者、レン」
僕は、ようやく本戦の1回戦を終了した。これでベスト32。(もう、ええんやけど)と内心思った。
だが、大会は始まったばかりだった。
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