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前回、かき氷の機械を作ってから、紫玉に頼んでこの職人に協力してもらい、私が欲しかったキッチンツールを作ってもらった。職人としての腕がいいと思った理由のほかに、私の設計図を勝手に売ったり、自分で量産したりしなかったことが、信頼できるような気がした。紫玉は迷ったようだが、結局、受け入れてくれた。宰相府令嬢が職人と交流することが名声に不利なのか。そんなことは気にしないよ。
私が最初に欲しかったキッチンツールはオーブンだった。電気がないので、最低限の薪の窯を作るしかない。焼き物の調理法はよく見られる、ダックや焼肉などの名物料理で有名になった店も皇都にはたくさんあるので、職人はオーブンの存在を知っている。しかし、私はオーダーメイドのオーブンに特別な要望があります。子供にも使えるサイズにするほか、オーブンの底部には柔軟に移動できるローラーをつけたい。私の台所はあまり広くありません。食べ物を焼くには、戸外の庭がいいです。しかしそれは両親からセンスの悪さを指摘されるに違いない。移動できるオーブンがあれば、親が私の庭に来たときにこのオーブンを隠すのが楽になります。
しかし、私の考えが甘かった。この時代の薪の窯は私が思ったよりずっと大きかった。窯はれんが土で作られており、保温するためには十分な厚さが必要で、窯に換気用の煙突がついており、高さは成人と似ている。底部にローラーがついたデザインも、オーブンの高さをさらに高めた。目立った窯は、私の庭に着く途中で宰相府の侍従に見られ、その存在を指摘された。こんな道具は、隠すことができない…
初めて使ったのですが、オーブンでせんべい、干し魚、干し肉など、簡単なおやつを作ってみました。その結果は成功。丸い形のオーブンは食べ物の熱を均一にする。焦げ付きの可能性も低い。オーブンで設計された熱伝導層は伝達する熱量に制限があるため、食べ物が直接火に触れでいない。
しかし、このオーブンには致命的な欠点もあり、オーブンのドアを閉めると中の食べ物の状態が分からなくなり、火加減や焼き上げのタイミングで終了時刻を推測してしまう。この問題はシュレーディンガーの猫のように…また、断熱手袋がないため、オーブンが完全に冷めてから食べ物を取り出して確認しなければならない。スフレ(soufflé)のように冷めると崩れてしまう甘いものは絶対に作れません。最後の食べ物が完成ていなければ、もう一度薪を加えて加熱し、待ちの手順を繰り返す。つまり現代のオーブンにくらべる使いづらいのです。
若しオーブンでパンやクッキー、シフォンケーキのような洋菓子を作るには、職人に頼んで温度計を作ってもらう。しかし温度計のやり方は私を困らせた。
温度計の外側の透明なガラスが難点だ。この時代のガラスの名は「瑠璃」で、大量の不純物を含んだ濁った色のガラスに似た物質で、光を透過するが不透明で、食器やランプを作るのに使われた。そしてその生産技術は復雑なので、皇室だけが瑠璃作りの職人を育てています。宰相府でもそんな職人を雇う資格はない。温度計の真ん中の水銀は有毒ですこの時代に錬金術で水銀を抽出した人は、ほとんどが毒で死んだ。温度計を作成できる分量を得るのはかなり難しい。とにかく、温度計はあきらめましょう。
でも、どうしてもケーキを作ってみたいです。温度制御の難しさは経験的に克服できるはずである。
最近、水牛乳の分層した物質の上層部がクリームのようなものであることを発見し、レモン汁を加えてクリームチーズを作ることもできるようになった。この世界で生まれて以来、私は何年もチーズケーキを食べたことがありません…ただ、生クリームを箸でまぜると腕が凝ってしまうので、生クリームをまぜるのに便利なミキサー(泡立て器)を職人さんに頼んでおく必要があります。あ、もしチーズケーキができたら…
あと何か特別に欲しいものがあるといえば、冷蔵庫です。私が作ったかき氷が人気だったので、宰相府は近年氷を買うのに年々お金をかけています。しかし、氷だけならアイスクリームを作ることはできません。紫玉は、涼しい井戸水でも温度を下げることができだと言っています、ただそれはまだアイスクリームを作るには不十分な温度。また冷蔵庫の役割は、食べきれないものを保存し、賞味期限を延ばすことです。冷蔵庫がないので、たくさん作ったものを変質する前に無理に食べてしまい、家族にも食べてもらいたいと頼んでいます。その結果、宰相府の人の多くが太ってしまった。父は太っていることへの反感が強く、小太りの役人が腐敗しているように見えるため、宮廷では目立つようになった。そのため、父は私の小さな台所の生産量を制限し始めた。
私は職人に冷蔵庫のような道具があるかどうか尋ねてみてほしいと頼んだ。答えは否定だ。冷蔵庫の製法は何なのか、オゾン層を破壊するものなのかもしれない。そんなに簡単に作れるものじゃない。大人しく冬を利用して氷を穴蔵に貯蔵しましょう。
薪で焼いたせんべいが評判になった。さらに最近は、私が作るおやつが多いので、宰相府の人たちはご飯があまり好きではなく、ご飯を残しておせんべいを作ってくれる。なんと不健康な食事の仕方なの。ちゃんとご飯を食べ、節制しなければならない。のりを追加してくれた叔父さまに、干し肉などの貯蔵時間の長いものを送っしましょう。そんなことを考えていると、父が私の余ったおやつを没収した。
恩平姫さまから、私の作ったおやつを食べてみたいというお手紙が来ました。どこから知ったのだよ?