第8話 修行
俺は父上に修行をするよう命じられた。だがただの修行ではない。
俺は今、五行のうちのひとつを鍛えている。五行とは木、火、土、金、水からなる術の事である。
木は敵を捕らえ、火は妖怪を滅し、土は相手から自分を守り、金は強化や変化をし、水は傷を癒す。
今俺は木の練習をしている。木は周りの自然を活かした戦いが得意で、陰陽術で木の根を操ったりすることで相手を捕縛する術である。
次から次に襲ってくる式神を、周囲に生えている木の根を操り、ひたすら捕らえる。
「俺は強くならなきゃいけないんだ」
この修行全て達成すればくうせんは生き返ると父上は言った。だがどう見ても怪しい顔をしていたが、従うしかなかった。
「縛、縛」
その繰り返し
しばらくして父上が様子を見に来た。
「見せてみよ」
父上が鬼の式神を召喚する。
「忌まわしき鬼め」
「いざ、開始」
父上の合図とともに、鬼が俺に襲いかかってくる。俺は恐怖に襲われる。だけどここで止まっていたら。
俺は、くうせんを取り戻したいんだ。
「縛」
鬼に木の根っこを絡ませ、一瞬で捕らえる。
「次の特訓に移る。次は火だ。火は自分の力を外に出す感じだ。では真似してみなさい」
父上から火について何時間も教わり、父上に案内された場所は、
「湖!?」
「この湖の水全てを消滅出来たら次の試練に移る」
さすがに……無理だろ。
「火 "滅"」
湖に火を放つが、水は蒸発すらしない。
「じゃあ私は帰るから頑張れよ」
父上は帰ってしまった。
きっと父上ですら、この湖の水を全て蒸発させるのは無理だろう。これじゃ、くうせんは帰ってこないじゃないか。
「滅。滅。滅。滅。滅」
それでも湖は、一切蒸発しない。
俺は、もう取り戻せないのか……。