第5話 ごめんね
くうせんは鬼どもを首をはねる。一つや二つどころじゃない。既に10体は殺している。それでも鬼は減りはしない。
「くうせん…」
俺は間違っていた。このままじゃ……くうせんは……死ぬ。
何もできない過去の俺を嘲笑うかのように、俺は一歩一歩少しずつ歩き出す。
くうせんは驚いた様子だった。
「ダメです、来ては」
くうせんに止められても尚、俺は進む。もう二度と失いたくないから。あんな思いはしたくないから。
過去の過ちが脳裏に浮かぶ。
「政宗……助けて、助けてよ、……政宗」
過去の幻聴が聴こえる。それでも俺は己を奮い立たせ、落ちている刀を拾う。
もう失いたくないのなら。母上のように、死んでいく者を見たくないのなら。
戦え俺。もう何も失いたくないのなら。大切な人を護りたいのなら。進め。刀を握れ。立て。己を奮い立たせろ。足を動かせ。
「くうせん。式神は盾じゃない。 式神にだって命はある」
だから護るんだ。だから俺も戦うんだ。
「俺の大切なお前を、俺が愛したお前を、……俺は、護ってやりたいんだ。だから、共に夜鬼を倒そう」
くうせんは微笑み頷いた。
「行くぞ、くうせん」
俺は失いたくない。だからくうせん。死ぬなよ。