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陰陽術の使い方  作者: 総督琉
京都騒乱編
44/161

第44話 鬼童丸

「どうして……鬼童丸がいるんだよ!?」


 知らないはずがない。恐れないはずがない。

 雪女と影女も怯えている。

 鬼童丸が一歩こちらに踏み出す度、俺たちには恐怖という感覚が全身を渡る。


「政宗……」


「やるしか……ないのか……」


 鬼童丸はあと十歩で俺たちに触れられる距離まで近づく。

 攻撃を仕掛けようにも恐怖で体がすくんでしまう。

 それでも、俺は陰陽師である。


「滅」


 俺の手から放たれた火炎が、鬼童丸の体を埋める。だが鬼童丸はその攻撃に一切動じず、ゆっくりと進んでくる。


「白刃一閃」


 くうせんは鬼童丸の首に刀を振りかざす。だがくうせんの刀は首に傷一つ与えられない。

 くうせんはすぐに屋根の上に移動すると、雪女と影女はすぐさま攻撃を仕掛ける。


「雪蜂」

「影蜂」


 雪と影の弾丸が鬼童丸を直撃するも、かすり傷一つつかないその体に、俺たちは絶望を覚える。

 だが鬼童丸は未だに攻撃せず、一歩一歩をゆっくりと進んでいる。

 だが俺たちは舐めていた。

 鬼童丸は一瞬で俺と雪女と影女の背後に移動し、影女に電気を帯びた右の拳で殴り吹き飛ばす。影女は遠くの建物にぶつかり、そこから大きな煙を立てる。


雪檻(ゆきおり)


 雪女は自分の背後を凍り漬けにする。背後にあった建物が一面氷に包まれる。

 だが決着はついていない。

 鬼童丸は凍り漬けにされていたが、自らで氷を破壊した。


「嘘だろ!」


 電気を纏っている鬼童丸の蹴りをモロにくらった雪女は、この街の象徴である時計塔に衝突する。時計塔は見事に崩れていった。


 俺は刀を抜き、鬼童丸に斬りかかるも……


 「消えた!?」


 「うっ」


 悶絶する声が聞こえたのは、くうせんが居た屋根の上。

 くうせんは腹を押さえ、屋根の上で倒れていた。


 「これが……世界最強の妖怪。鬼童丸!」


 その圧倒的強さに、俺は握りしめていた刀を地に落としていた。


 また失うんだ。昔のように。

 また護れない。母上が死んだ時のように。


 「どうして俺は、仲間一人救えないんだ」


 俺の哀れな叫び声がこの細い路地に響く。鬼童丸は俺を上から見下ろしている。


 「やっぱ最強は見下ろすのが一番似合ってるじゃねーか」


 鬼童丸は俺に向かって突進してきた。

 ここで俺は死ぬと確信していた。武器を持つ気力すら無く、ただ死ぬことを受け入れている。だから俺は死ぬ覚悟が……


 「政宗ー」


 くうせんの叫び声。


 「届いたよ。くうせん。諦めるなんて、陰陽師には相応しくないないよな」


 俺は刀を握り、鬼童丸の直撃に合わせて刀を振るうのを振るえながら待つ。

 だがそこに救世主のように現れた存在。


神火(かみび)


 空から鬼童丸に向かって業炎が突撃する。その炎は効いているようで、鬼童丸は初めて膝をつけた。

 空には一人の男が浮いていた。


「安倍晴明!」

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