第4話 離さないで
鬼の大群に四方を囲まれた僕たち。
「殺せ」
夜鬼と名乗る男の命令と共に、鬼たちが一斉に襲ってくる。俺たちを囲んでいる鬼は何十といるので、気迫だけで俺は圧倒されている。だが、陰陽師としての覚悟はある。
「くうせん」
「承知」
くうせんが鬼どもを蹴散らす。だが敵は無数にいる。殺しても殺しても数は一向に減る気配はない。
「さすがに数が多いな!」
このまま戦っても死ぬだけだ。くうせんを苦しませるような事はしたくない。
もう大切な人を失うのは、嫌だから。
「皆、二手に別れて逃げるぞ。くうせんは俺と来い。花姫とめがねはもっと安全な場所に避難しろ」
俺はただくうせんを守ってやりたかったのだろう。だからめがねと花姫に敵を分散させたかった。
俺たちは走っている内に、森の出口を見つけた。
「森を抜けられる。」
だが現実はそう甘くなかった。俺は出口に出ようとした瞬間、見えない壁に衝突する。
「嘘だろ」
「夜鬼を倒すしか無いのではないでしょうか?」
くうせんの言うことは一理ある。だが思いをは冷静でいられるはずがなかった。
鬼の森に迷い混み、鬼の大群に追われ、尚且つ結界により閉じ込められているんだ。
「……なら行くか」
ーー鬼!?
俺の目の前に、突如鬼が現れる。くうせんはとっさに体をひねり、鬼の頭を斬り飛ばした。
くうせんが殺してなければ、俺は確実に死んでいた。
「大丈夫ですか?お手をお繋ぎいたします」
相変わらず優しいな。
くうせんと俺は手を繋ぎ、壊れた家へ向かう。壊れた眼鏡が落ちていた。それに破れた布。
「破れた…布?」
着物の裾だ!
俺とくうせんは急いで先へ向かう。
そこには鬼が群がって二つの何かを漁っている。ひとつはオッサンのようなシワだらけの手。もうひとつは着物を着た小さな子供。
「そうか、遅かったんだ。何もかもが遅かった」
くうせんは脇目もふらず鬼の群れに飛び掛かっていた。