第31話 脱獄
俺と土蜘蛛は檻の中に入れられた。いつの間にか檻は、どこかの地下室のような場所に移動されていた。
俺は檻の中で土蜘蛛と片腕を一緒に巻かれ、身動きが取りにくくなっていた。
「おい土蜘蛛。なぜ裏切られてんだ?」
「知らねえよ。ってか何でお前と一緒の檻なんだよ」
「そんなのどうでもいいだろ。お前はボスに裏切られてんだぞ。どうにかできないのか?」
「いや。裏切られるのは薄々感づいていた。だから別に驚いてはない」
土蜘蛛も分かってて俺をここまで連れてきたんだろう。
本当に哀れな奴だ。
「なあ土蜘蛛。今からでも人間に戻れるぞ。その八本の手も、頭の触覚も、全部無くなって元の人間に戻れるんだ」
「俺は自分から妖怪になることを望んだんだ。だから妖怪になって後悔はない」
「そ……そうか」
土蜘蛛の意思は変わらないらしい。
でも土蜘蛛は少し悩んでいるように見えた。
きっと自分が愚かなことをしていると気づいているのだろう。だが分かっていても沼に飛び込むのが人間だ。
「それよりここから脱出しないと」
「おい陰陽師。このまま我らの妖怪の王の餌食となれ」
土蜘蛛は強気で言ってきた。
「土蜘蛛。お前は本当にそれでいいのか?」
「いい……に決まってるだろ」
土蜘蛛は少し考えていた。きっと逃げたかったのだろう。
それでも土蜘蛛は暴れたりせず、檻の中で静かにボーッとしていた。
俺は檻に向かって"滅"を撃つ。だが檻は傷一つつかない。
「どうなってるんだ?」
「無駄だ。この檻は陰陽術が一切効かない」
「なら」
俺は妖刀を抜き、檻を斬る。それでも傷一つつかない。
「無駄だよ。この檻はお前じゃ壊せない」
「ならお前に壊せるのか?」
土蜘蛛を挑発すると、土蜘蛛は檻に手を向ける。
「そんなんで……」
壊れるはずがないと思っていた。それに土蜘蛛は壊さないだろう。
だって土蜘蛛は妖怪の王の餌食になりたいのだから。
だが、檻が一瞬にして壊れた。
「なななな……何をしたんだ!?」
「出たきゃ出ろ。どうせ外は妖怪だらけ。お前が逃げる隙など無い」
「行くぞ」
俺は土蜘蛛を引っ張り、土蜘蛛を外に連れ出す。俺と土蜘蛛は片腕が糸で巻かれているので、俺が外に出るなら土蜘蛛も同伴だ。
「この糸斬れ」
「斬れるならお前が斬れよ」
だがそれは土蜘蛛でも無理らしく、土蜘蛛は一緒に脱獄を図った。
土蜘蛛は少し笑っていた。
「行くぞ」
俺たちが檻から出た瞬間、待ってましたと言わんばかりに、見張りの妖怪が何体も襲い掛かってきた。
「滅」
俺は襲い掛かってくる妖怪たちに"滅"をくらわせ、倒す。 だが数が多すぎる。
「次だ次」
「陰陽師。俺はお前が嫌いだ」
「ああ。俺もだ」
俺と土蜘蛛は互いに背中を合わせる。
これで後ろから襲ってくる妖怪は気にしないで戦える。
そして俺たちはこの城から抜け出すことを開始する。




