第30話 妖怪の王
俺は土蜘蛛に空まで吹き飛ばされていた。
「土蜘蛛。まだお前は人間に戻れる」
俺は土蜘蛛を人間に戻すため、俺は土蜘蛛を殺さないでいた。だがこのまま妖怪のままだったら、土蜘蛛は人間に戻れない。
「なあ陰陽師。俺は人間が大嫌いなんだ。だから俺は妖怪になったんだ」
「違う。お前は人間に戻りたいと思ってる」
「違う。俺は陰陽師が大嫌いで、お前らのお世話になるくらいなら、死んだほうが……ま……」
急に俺と土蜘蛛に糸が絡み付く。俺たちは引き締められ、体が密着する。
「何だ?」
そして空まで運ばれる。
「ここは……!」
目の前には大きな城があった。
「空に……城!?」
この城は周りが壁に囲まれていて、戦国時代にあってもおかしくないくらい普通で、中古の城だった。
その城の屋根に人の姿をした男が立っていた。
「土蜘蛛。奴が……お前ら十二夜叉大将をまとめる奴か?」
「ああ。あのお方こそ、我ら十二夜叉大将が敵わない存在だ」
土蜘蛛が震えている。いや、土蜘蛛よりも黒龍のほうが強そうだが……。
「土蜘蛛。良くやった」
謎の男はそう言った。十二夜叉大将を束ねる男は、手から出てる糸を持ち上げ、十二夜叉大将を束ねる男の頭上に浮いている檻に俺たちを入れた。
「あれ? 土蜘蛛も一緒に!?」
「良くやったよ。土蜘蛛。でもね、君は十二夜叉大将には力不足すぎる。だから新しい者を用意した」
「用意?」
「さあ来なさい。百々目鬼阿修羅」
初めて聞いた妖怪の名前だった。百々目鬼だったら知っている。だが百々目鬼阿修羅なんて妖怪は存在しない。いつも本ばかり読んでいたから全ての妖怪は知っている。
大きな足音が、十二夜叉大将を束ねる者に向かっている。
百々目鬼は小さい代わりにスピードがある厄介な妖怪だ。それなのにこの力強い足音。これは……
「まさか……お前」
「この妖怪は私が創った。この妖怪は百々目鬼と阿修羅を複合させた妖怪。つまり複合妖怪だ」
十二夜叉大将を束ねる男は、誇らしげに語っている。
複合妖怪は様々な妖怪を組み合わせた妖怪。つまりこの妖怪は恐ろしく強い。
だがそんなことよっぽど強く、知識もある者しかできない。
それにこれは禁忌の術。それほどの大罪を犯すなど、人道に反している。いや、あいつは人間じゃないな。
「土蜘蛛。あの男の名は?」
「彼はこう名乗ってる」
ー妖怪の王、と。




