第20話 十二人の陰陽師
俺は龍を倒した。だがあまりに膨大な力を使いすぎた為に、瓦礫の上で安眠をとっていた。そこに十二人の陰陽師が現れる。
「初めまして。私達は十二神明王と呼ばれる陰陽師です」
話しかけられたので、仕方なく俺は起きる。
「十二神明王?聞いたことがない。今は休みたいんだ。帰ってくれ」
それでも諦めたくない十二神明王は、無理矢理にでも俺を連れていこうと、式神を召喚しようとした。
「十二神明王とやら。何をしようとしているのですか?」
くうせんが十二神明王の前に立ちはだかる。
「大丈夫ですか、政宗」
「すまん、くうせん」
「命を懸けて救ってくれたのですから、私も命を懸けて家までお送りするのみです」
「俺は俺を信じてくれたくうせんを信じる。だから俺の命は預けたぞ」
「はいっ」
動けない俺はくうせんを信用し、今は戦闘はくうせんに任せる。
「君達に手荒な真似はしたくないのだがね。出でよ、勾陳」
十二神明王と名乗る者たちの一人が式神を出す。その式神は金色の蛇の姿をしており、普通の蛇と同じ大きさだった。
「その程度の式神か。舐められたものだな。白刃一閃」
くうせんが勾陳と呼ばれていた金色の蛇に斬りかかる。だが勾陳に刃は届かない。勾陳は土の壁によって守られる。
陰陽師が土を使ったのか?
「卑怯だぞ。式神同士の争いに水を差すなど」
「これは私の術ではない。そんな事も分からぬのか、くうせんとやら」
まさか……式神の……術!?
式神も陰陽師が使えるような術を使えるのだろうか?
「殺れ、勾陳」
勾陳はくうせんに向かってにょろにょろと進む。
「百行飛び」
勾陳は飛び付いて噛みつこうとするが、くうせんは空に飛び、勾陳の攻撃を回避する。だが勾陳はくうせんを逃がさない。
「土城」
土が塔のように上に伸びていく。くうせんはその塔に体を巻き込まれ、くうせんも上に行ってしまう。このままくうせんを土で捉えるつもりだろう。空中では思い道理に動けない。
このままじゃくうせんは……負ける。
その時俺の脳裏にくうせんに言った言葉が頭を過る。
「俺は俺を信じてくれたくうせんを信じる。だから俺の命は預けたぞ」
俺はその言葉道りの行動をとっていたか。いいやしていないじゃないか。
くうせんに我が力を。だが微少な力だ。そんな小さな力でも俺はくうせんに信じて力を与える。信じてないって思われるかもな。でも信じているからこそくうせんに己の全てを託す。
「やっちまえ、くうせん」
「はいっ、政宗」
くうせんは土城から抜け出し、空中に身を投げた。
「土檻」
勾陳が土でくうせんを囲む。だが俺は一切不安に思わない。だって俺はくうせんを信じているから。
「白刃微塵」
くうせんを囲もうとしていた土が一瞬で斬られ、粉々に弾け飛ぶ。
「名刀 柊よ。我が期待に応え、今こそ力を解き放て。柊深世」
くうせんは斬った土の上を進み、地で見ていた勾陳にくうせんは上空から斬りかかる。上空から降りる速度と勢いで、勾陳はくうせんの刀で真っ二つに斬られる。
「負けたよ。くうせん。そして政宗。君達の信頼感は凄いな。そんな君達なら次に来る災厄も払えるかもしれん」
十二神明王とやらはすぐに敗北を認めた。だが俺はそんなことよりも、他のことが気になっていた。
「災厄とは……何ですか?」
「また会えるだろうな。それが定めだ」
「おい待て。何を言ってるかさっぱり」
十二神明王と名乗る者達は颯爽と消えていった。それは単に流れる風のように。
「大丈夫か、くうせん。今回復させる。癒」
くうせんの傷は完璧にとはいかないが、痛みが引くくらいまで回復はしたと思う。
「大丈夫か、政宗。くうせん」
カグレと天狗は俺たちを心配し、駆け寄って来てくれた。
「私はあなたたち都市神に聞きたいことが有ります」
「構わないが……」
「"災厄"とは、何ですか?」




