第2話 僕の式神
「平等院政宗。18歳になったお前を正式に跡取りと任命する」
やっとこの時が来た。忌々しい妖怪どもを倒せる日が。
「お主に式神を授けよう。」
「やったー」
強い式神がいいな。かっこよくて頼りになる大男。いや、何もかもを破壊し尽くす鬼人。空を渡る巨大な鳥。
俺は期待に胸を膨らませ、色々な式神を想像していた。そして俺の父は僕のパートナーとなる式神を呼んだ。
「来るのだ。くうせん」
障子を開け出てきたのは、可愛らしい女性だった。
武装は左肩と左足、そして腹に赤い甲冑をつけている。左の横腹には白い刀を一本ぶら下げている。髪色は白髪で、おしとやかな感じだ。
「よろしくお願いします。くうせんと申します」
くうせんはとても礼儀正しく、彼女は普通の式神とは違い、人間から式神に突然変異した希少な存在である。
「こちらこそ…お願いします」
これが俺の初めての式神。新しい式神を手にいれた政宗は、舞い上がっていた。
「速く妖怪退治したいよ」
「お前にはまだ速い。」
俺は何度もお願いをする。だが父上は言うことを聞いてくれない。
「父上~」
渾身のかわいい子アピールをする。
「ダメなもんは、ダメじゃ」
父上は俺をおいてどこかへ行ってしまった。
行かないでよ。俺は……俺は母上の仇を撃ちたいんだよ。撃たせてくれよ。
それでも父上は遠くに行ってしまう。
「父上……」
するといつも通り、護衛の二人が僕のもとにやってくる。護衛二人は白い和の服を着て、剣を一本腰に携えている。
こいつらも陰陽師だから、式神持ってるはずだよな。……いいこと思い付いた。
「ねえ護衛君。君たちの式神ちょうだい」
護衛たちは、苦い笑みを浮かべる。式神は陰陽師にとってパートナーのような存在だから簡単に手放すことはできない。
「この式神は、あなたをお守りするためにあるんだ。だから…」
俺は、護衛たちの話を無視し式神が封じられている十字型の紙を奪う。そして一目散に逃げる。
「政宗さま。お待ちを」
「付いてこなくていいぞ」
護衛たちが追いかけるが、俺は身軽な動きで塀を飛び越え、周囲の森の中を颯爽と駆け抜ける。くうせんも身軽な動きで、俺のあとを追う。
「行くぞくうせん」
くうせんは少し笑っていた。
「楽しいか。くうせん」
くうせんは静かに頷いた。
「くうせん。これからもっと楽しくなるぞ。」
楽しませてやるよ、くうせん。お前の人生はきっと、これから明るくなるぞ。