第19話 龍
200メートルほどの龍が暴れ、辺り一面が焦土と化す。
「このままじゃ俺達全員、龍に殺される」
「安心しろ。私は都市神のカイラ。君達をここから逃がすことなら容易い」
「でもそしたらこの町の人々が……」
「死ぬだろうな」
この周囲には小さいながらも町が存在する。もしここで龍を止められなければ、龍はこのまま暴れまわり、多くの人を殺してしまう。
「だから倒す。いくら強い妖怪だろうと俺は戦わなければならない。負けたとしても戦うんだ。だって俺は、"陰陽師"だから」
俺は龍に向かって飛び込む。
この勝負で勝てる確率はほぼ無い。ただの無駄死にになるかもしれない。けどここでやらなきゃ誰があいつを止める。しばらくは誰にも止められない。だから戦う。だから勝つ。
「こっちだ。龍」
「ヴぁーーー」
龍の叫び声。俺は怯える。だが進む。幾戦を交え、幾時を超え戦い抜いてきた陰陽師、安倍晴明は語る。
「逃げていたら強くは成れない。己の弱さと向き合わなければ、到底ビジョンは見えてこない」
と。
「怖がるな。恐れるな。戦え、陰陽師として」
空が荒れ始める。
「二度と大切な者を失わない為に、今ここに全てを賭ける。滅し滅せよ。太陽が如く。今ここに裁きを下す。"壊滅"」
それに呼応し龍が炎を吹く。
「俺の炎とお前の炎。勝ち目ははなから決まってる」
滅の火が龍の周囲へ舞う。
「滅爆」
巨大な爆発音とともに、周囲の火が爆発を起こし龍を襲う。これが俺の最後にして最強の攻撃。だが龍は止まらない。
「やはり……龍は殺せない……」
龍は俺を無視し、くうせんたちの方に向かっていく。
「また失う。鬼の森の時と同じように」
俺は理性を失っ……否。おれは理性をギリギリの所で保つ。俺は自分自身に力が溢れ出ていることを感じる。
俺は知っていた。自分が理性を失った時、膨大すぎる力が自分の周りに現れることを。だがその力を俺はコントロール出来ない。だから一か八かで龍に突っ込んだ。そして成功した。
俺は自分の中に宿る膨大なエネルギーを頼りに、強力な技をいくつも生み出す風。
「大縛樹」
巨大なツルが龍に絡み付き、捕らえて離さない。
「隕滅」
空から1メートルほどの隕石のような滅の塊が、龍に降り注ぐ。その滅が龍に当たると、龍は血を吐き、今にも倒れそうだ。そんな龍に、俺は渾身の一撃を放つ。
「大隕滅」
龍の体に30メートル以上の隕石が落ち、龍は粉々に砕け散る。
これが陰陽師、"平等院政宗"の力。世界は彼に憧れ、嫉妬する。だが彼は止まらない。この世の妖怪全てを滅するまでは……




