第15話 カグレ
くうせんが生き返った。勝ったんだ、あの都市神に。
「よくやった、政宗」
くうせんが俺の頭を撫でてくれる。その手の温かさを久々に感じ、修行や都市神との戦いでの疲労も和らいでいく。
すると生きていた都市神が話し掛けてくる。
「私が都市神のカグレ」
「何故勝ってないのに生き返らせてくれた?」
「不満か?」
そう聞いてきたカグレ。不満ではない。だけどどう言えば良いのかな。この気持ちを。
「とても嬉しい。だがこんな事していいのか?」
「いいんだ……君が……式神に思う心が深く伝わってきたから……」
これでくうせんが救われたんだから良いとしよう。
「ありがとう。カグレ」
カイラは微笑んだ。これが都市を守る都市神か。とても優しかったんだな。
だが突然カグレは怖い顔をする。
「君達、すぐにここを出ろ。速く」
数秒も経たない内に鬼の集団が破壊された観音堂の中に入ってくる。
「酒天……童子」
カグレが呟いた妖怪の名前は、俺は知っていた。
酒天童子は鬼の国頭領であり、鬼の中でも上位の妖怪。俺達じゃ到底敵わない。しかもそんな鬼が仲間の鬼を連れている。
「何しに来た 」
「記念すべき一人目の都市神の命、頂きに参った次第でございます」
「あまいんだよ。お前は」
カグレが一匹の鬼を金棒で吹き飛ばす。
「滅」
俺もカグレに協力し、鬼に火を放つ。
「君は逃げろ。お前ごときじゃ敵わない敵だ」
それでも俺はカグレに反抗し、感情的に声を張り上げる。
「俺は鬼に恨みがあるんだ。ここで引き下がったら駄目なんだ」
鬼がこんなにいるのだから、一匹残らず滅してやる。花姫やめがね、そしてくうせんの仇を撃ちたいんだ。
「私も戦う」
「くうせん、でも……」
くうせんは鬼に殺された。だからくうせんは鬼にトラウマがあるはずなんだ。それでもくうせんは戦うというのか。
「いいの。私は政宗の式神だから。政宗と一緒にいきたい。だから……戦う」
「いくぞ、くうせん。俺達の刀は今度こそ鬼に届く」
「はあぁぁ」
俺達は鬼に一斉に飛びかかる。
怖くても、戦いたくなくても、それでも戦わなければいけない時がある。それが、今だ。
「縛」
「百行飛び」
俺は周囲の木の根っこで鬼を捕らえ、くうせんは空高く飛ぶ。
「滅」
「白刃一刀」
俺は鬼を火で燃やし、くうせんは燃やされた鬼を真っ二つに斬り刻んだ。
俺たちのコンビネーションとその強さに、鬼共は恐れ、おののき、震え出す。今では立場は正反対だ。
「もう失うだけの陰陽師じゃない。俺は、戦う陰陽師だ」




