12/161
第12話 水
俺はいつの間にか倒れていた。
「朝!」
「合格じゃ。水の試練に移るから速く来い」
水。それは癒しである。水を使いこなせば傷はたちまち消えるだろう。
父上は俺の指に火で火傷の跡をつける。小さな火傷だ。
「この傷を1時間で修復出来ればくうせんを生き返らせられる」
最後の試練が始まる。
「手に力を込め、力を外にも出す感覚だ。やってみろ」
「そんなの火と大差無いじゃん」
「火は殺す力。水は癒す力。それを意識しろ」
何言ってるか分からないが試してみる。
「水」
手からモヤモヤした何かが出る感覚だ。
俺は昔から回復系の術は詳しく知っていた。あの日に母上を失ったから。だから水という術だけはまだ幼かった頃でも使えた。
俺は指先からモヤモヤした感覚を感じていた。この感覚が水なのだろうか。俺はひたすら出し続ける。疲れたところで出すのをやめる。
俺は指を見る。
「治っ……てる!」
「たかがその程度で驚くな。これが陰陽師としての普通なのだ」
これでくうせんが生き返る。




